新国立問題で安藤忠雄氏が会見「1人の人間としてはザハ案を残してほしい」
建設費の高額化が批判されている新国立競技場問題について、デザイン選考の審査委員長を務めた建築家の安藤忠雄氏が16日、都内で会見した。斬新なザハ氏案を選んだ理由として、「2020年の東京五輪に勝ち残って欲しいという気持ちの一部があの案を選んだかもしれない。一人の人間としては、できたらザハ案を残してほしい」と語った。 【全文】安藤氏の会見資料 コストアップの詳細は「承知していない」
安藤氏は、デザイン選定以降の設計段階でのコストアップの詳細については分からないと説明する。 着工までの流れとして、安藤氏らが担当した「デザイン選定」、その次に設計事務所などによる「基本設計」、最後に「実施設計」が行われる。安藤氏は、自分たちはあくまで「デザイン選定」までを担当したのであり、基本設計段階の1625億円への値上がりについては「耳にはした」が、それ以降の2520億円への工費の膨らみの詳細については分からず、「なぜそんなに高くなったのか、私も聞きたい。どこかを下げられないのか」と語った。 採用されたザハ氏案については「ダイナミックで流線型で斬新、そしてシンボリック」と評価。「2020年の五輪招致で東京に勝ってほしいなという気持ちの一部があの案を選んだかもしれない」と振り返った。政府の新国立デザイン見直しの方針が報じられているが、今後については「一人の人間としては、できたらザハ案を残してほしい」と要望した。 コスト面については、「値段が合わないなら、(工費を下げられないかを)設計事務所で討論して、それを公に公開しながらやればいいのではないか」と提案した。
会見前に安藤氏名義で配付された資料などによると、今回のデザイン選定には、五輪開催に求められる8万人の収容規模、スポーツやコンサートなどの文化イベント開催を可能にする「可動屋根」という複雑な要求があり、2019年に日本で開催されるラグビーW杯までというタイトなスケジュールも背景にあったとしている。 採用されたザハ氏のデザイン案は、世界に日本の先進性を発信し、優れた日本の技術をアピールできるデザインだったと評価。技術的な難しさとコスト面の課題はあったが、技術面は「日本の技術力を結集することで実現可能」で、コスト面は「ザハ氏と日本の設計チームによる次の設計段階で調整可能と考えた」と説明している。 しかし基本設計の段階で、当初予算の1300億円から工事費は1625億円になった。ただ、この額なら実施設計の段階でコストを抑えることで実現可能と認識したという。そして、安藤氏は、現段階で2520億円にまで総工費が膨れ上がったコストアップ部分の詳細や、基本設計以降の設計プロセスについては「承知していない」としている。