京急百貨店で購入した伊勢定「うなぎ弁当」で「160人以上が体調不良、1人が死亡」、法的責任どうなる?
●京急百貨店側に責任は問えるか?
――体調不良をうったえた人のうち、90代女性がその後死亡したと発表されています。万が一、うなぎ弁当が原因で死亡した場合は、店側の責任はどのように問われるのでしょうか。 まず、民事上の責任ですが、被害者の相続人は、製造業者に対し、実際に負担した治療費、葬儀費用、被害者本人の慰謝料、被害者の逸失利益等を請求することができます。 次に、食品衛生法6条は、「不潔、異物の混入・添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがある」食品等の販売等を禁止しています。法人である製造業者が、6条に違反した場合には、1億円以下の罰金に処せられる可能性があります(食品衛生法88条1号)。 ――伊勢定を出店させていた京急百貨店側の責任は問われますか。 京急百貨店は、伊勢定とテナント契約を締結し、テナント料を得ているわけなので、伊勢定の不法行為に対して、百貨店も責任を負うべきではないかという考えもあるでしょう。 他人の不法行為に対し損害賠償責任を負う理屈として、使用者責任(民法715条)があります。使用者責任が認められるためには、「ある事業のために他人を使用」したことが要件となりますが、これは事実上の指揮監督の下に他人を仕事に従事させることを意味します。百貨店は、テナントに場所を提供しているだけであり、事実上の指揮監督の下、仕事に従事させているわけではありません。 したがって、京急百貨店には使用者責任は認められないと考えます。
【プロフィール】 大橋 賢也(おおはし けんや)弁護士 神奈川県立湘南高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。平成18年弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。離婚、相続、成年後見、債務整理、交通事故等、幅広い案件を扱う。一人一人の心に寄り添う頼れるパートナーを目指して、川崎エスト法律事務所を開設。趣味はマラソン。 事務所名 :川崎エスト法律事務所 事務所URL: http://kawasakiest.com/