AIが患者の治療法導くか IT企業の動き活発 医療現場のデータ解析に強み生かす
政府も現場の負担軽減などへ向け、AIの医療分野での活用の可能性を探っている。ただ、人間の生死にかかわる分野だけに極めて慎重に検討を進めている。積極的に活用を広げていくには議論やルール整備が追いついていない状況だ。
厚生労働省は令和3年に開かれた政府のAI戦略に関する会議で、画像診断や治療方法創出などでのAI活用を例示し、国民や医療従事者、民間企業にメリットがあると指摘した。経済産業省はAIやソフトウエアを活用した次世代型医療機器の海外展開を目指す企業の支援に乗り出し、7年度概算要求に関連予算を盛り込んだ。
ただ現状、AIの活用範囲は限定的だ。医療現場で使うAIを含めたソフトウエアなどは「プログラム医療機器」として承認を得る必要がある。審査に少なくとも数カ月かかるなど認定ハードルが高く、進化のスピードが早いAIにとっては相性が悪くなっている。
審査を担う医薬品医療機器総合機構(PMDA)によると、AI関係の機器の承認は9月末時点で41品目にとどまっているという。
AIの特性上、承認を受けたモデルでも、医師に誤った助言をするおそれもある。厚労省は平成30年に、AIを用いた支援プログラムを利用する場合でも診療や治療の主体は医師で、責任は医師が負う旨の通知を各都道府県に出している。リスク管理の難しさも利用が進みにくい一因だ。
NTTデータ経営研究所の北野浩之アソシエイトパートナーは、現状での医療分野へのAI活用は、資料作成などの事務作業の効率化にとどまると指摘。AIによる治療法の提案などが活用されるためには「医師が責任を強く問われない形にすることが必要」であり、「AIを導入する病院とAI開発企業との間で、責任分界点を明らかにするための法整備などが必要だ」と訴えた。(根本和哉、飛松馨)