【衆院選ネット世論分析】40代前後で争点が分断か、フィルターバブルで「政治とカネ」は若者に刺さらず?
■ 20~30代、SNS中心の情報摂取で「カオス」に ──ネットで情報を得て投票にいく層が可視化されてきたとのことですが、ネット世論と向き合う上で大切なことは何でしょうか。 谷原氏:事実と意見を区別することです。投票行動に限らず、物事を判断する時には誰かの推測や意見の上に推測を重ねていっても建設的ではありません。ビジネスでも政策決定でも何でも、事実に基づいて判断するのが基本です。 XもYouTubeもSNSは誰でもコンテンツを作れます。事実関係を淡々と述べる人もいれば、自分の考えを発信する人もいます。過去の科学的研究からは、感情の入ったコンテンツの方が拡散されやすいということが証明されています。エンゲージメントを増やすために過激なことを言っていたり、感情を過度に発信したりする投稿が目に入りがちになります。 20~30代を中心に新聞などを見なくなり、SNSなどから情報を得ることが主流になれば、何が本当で何が自分の意見なのか、さらにカオスになると思います。そのため、ファクトと意見をしっかりと見極めるメディアリテラシーを知っておく必要があると思います。 もう一つは、自分に興味のある情報ばかりが目に入る「フィルターバブル」を認識することです。PV(ページビュー)数を稼ぎたいという経済合理性と、自分にとって心地良い情報をとりたいという人間の欲求が見事に結合しているのが今のSNSです。そういう情報の偏りがあることを認識しておく必要があります。 ──そもそもネット上での批判が怖くて、SNSでの発信を控える若年層も結構いるのではないでしょうか。
■ 年齢が高いほど陰謀論にだまされやすい? 谷原氏:ある調査では、「インターネットについてどう思うか」について7割以上の人が「攻撃的な人が多い」という印象を持っていることがわかっています。私の学生にも「社会的・政治的なことをツイートしますか?」と聞くと、誰もが「しません」と答えます。ツイートして叩かれるのが怖いという、言論の萎縮が起きているのです。 その結果、極端にリベラルな人か、極端に保守的な人がツイートしている状態で、望ましいネット世論とは言えません。ネット上でも建設的な議論ができるような場にしていかなければならないと思います。 今の若年層は比較的よくネットリテラシーの教育がされていると思います。フェイクニュースやネット上の情報の偏りがあることも認識していると思います。一方で、そういった教育を受けていない50代60代の方がむしろ、フェイクニュースや陰謀論の捉え方を注意した方が良いのではないかと感じています。 陰謀論を信じることと年齢には正の相関があるという調査もあり、むしろ中高年のネットリテラシーの方が重要かもしれません。 >>(最初から読む)【衆院選ネット世論分析】発信力で国民民主・玉木代表が圧倒、SNSで情報収集・発信・投票する新たな有権者層が出現
谷原 つかさ/河端 里咲