音と水辺の景色を心ゆくまで堪能「湖畔遊」|憧れのリゾートホテル
■オーディオマニアが開いた自家源泉も魅力の隠れ宿 (※その他の写真は【関連画像】を参照) 【関連画像】音と水辺の景色を心ゆくまで堪能「湖畔遊」|憧れのリゾートホテル 高知龍馬空港から一路、水量豊かな物部川の流れをさかのぼる。やがて山あいに至り、杉田ダムを過ぎれば川はたっぷりと水を湛えたダム湖になる。「湖畔遊」はその名の通りダム湖の水際に佇む。 3000坪の敷地の中、建物を包むのはたわわな緑と水と空だけだ。ロビー棟に入ったとたん、雄大な景観に感嘆の声がもれる。木立からは鳥のさえずりも聞こえてくる。 「早朝の川霧、夜の星も素晴らしいですよ。毎日感動しています。雉やウグイスもすぐ近くまで来ますし」と女将の西村昌代さん。 この土地は西村勝利さん、昌代さん夫妻が2人で老後を過ごすために見つけた場所だという。宿を始めたのは言わば成り行きだ。荒れ地を整えて家を建て、ここに温泉が出ればと試しに掘削してみたら非常に泉質の良い湯が出た。 そこで16年前に日帰り温泉施設として、おでんやうどんを提供していたところ、ほかのメニューもとの要望があり、野菜ソムリエ資格を持つ昌代さんが安全で体に良い食事を出すレストランを開いた。 ところが次には、宿泊したいという声が増えてくる。勝利さんの自室と今はないキャンピングトレーラーを客室にしたホテルのスタートは平成30年(2018)のことだ。 そこから始まったこの宿のもう一つの大きな特色が音響である。じつは勝利さんは60年余のキャリアを持つオーディオマニア。 ダイニングを兼ねたロビーにはウエスタン・エレクトリックの真空管アンプなどホール並みのシステムが組まれている。壁や天井の形状、使う素材もすべて音の反響を考えて勝利さんが選んだ。 目を閉じて流れるジャズを聴けば、演奏者一人ひとりの立ち位置もわかるほどの臨場感だ。また昨年完成した別棟の「AEL HALL」では、宿泊者は映像を観ながらアルテックのヴィンテージスピーカーのふくよかな音で、小さな映画館さながらの1時間を過ごせる。 そのことは、現在、3室になった客室も同様だ。それぞれ自家源泉の露天風呂やテラスがあり、メイン音響設備の名がつく。 「客室を増やしたかったんじゃなく、ヴィンテージの良い機器が手に入るとそれ用の部屋を作りたくて」というのが勝利さんの本音だ。 特別に、同じ音源を各部屋で聴かせてもらった。「ウエスタン」は、ウエスタン・エレクトリックの1972年製真空管アンプとソナス・ファベールのスピーカー。心地良く響く優しい音が、眼前の水と緑の景色に溶けていく。 次いで「マッキントッシュ」へ。ここは1960年製のマッキントッシュの真空管アンプとタンノイのスピーカー。壁の土佐和紙の効果もあって低音が太く響く。バロックなどを聴くのにも向いているそうだ。 そして「アルテック」はもともと勝利さんの趣味部屋だった最初の客室。壁と天井は響きの良いベイマツ科のトガや軽石、木製音響ボードで包み、アルテックの1950年製アンプと1960年製スピーカーが据えられている。 ここで聴くボーカルのふくよかさ、トランペットの伸びといったら・・・・・・。部屋で音楽を聴き続けて2泊する人もいるという。 湖畔にありながら塩分の高いかけ流しのにごり湯は体の芯まで温めてくれる。無農薬の米や野菜、土佐あかうしなどを用いた食事も素晴らしい。 そして昼夜移り変わる美しい湖畔の景観に包まれて最高峰の音響設備で音に浸り心をほぐす時間は、音楽好きにとって“最高の休日”となるだろう。 ■●約2000枚のCD ロビーにはジャズをはじめクラシック、オールディーズ、シャンソン、ワールドミュージックなど主人が集めた約2000枚のCDが並び、客室で自由に聴ける。もちろん自分の好みの盤を持参してもかまわない。 湖畔遊 高知県香美市香北町有瀬100 TEL/0887-59-4777 料金/1泊2食付9万700円~ 客室数/3室 チェックイン・アウト/15:00・11:00(プランにより異なる) アクセス/(電車)JR「土佐山田駅」よりバスで約20分「美良布」下車、徒歩約25分。(車)高知自動車道「南国IC」より約30分 ■●立ち寄りスポット「福留菊水堂」 牧野富太郎が愛した羊羹先代の奉公先の味を今も守る小さな和菓子店。百合根を入れた優しい味わいの「百合羊羹」(1400円)は植物学者・牧野富太郎博士も好んだ。 高知県高知市愛宕町2-13-3 TEL/088-872-4574 営業時間/9:30~18:00 定休日/日曜、月2回不定期で月曜 アクセス/JR「高知駅」より徒歩約5分 文/秋川ゆか 撮影/渡部健五(一部提供/湖畔遊)