【ドゥカティ ムルティストラーダV4S 海外試乗】世代を重ねるたびに快適さを増す「最高のツーリングバイク」…佐川健太郎
特に驚いたのは新たに加わった「バンプ検知機能」。これは前輪が段差を乗り越えた衝撃を感知しリアサスペンションのダンパーを瞬時に最適化するシステム。実際に車両を減速させるためのスピードバンプを越えたときも、突き上げ感は予想していたより少なく感じた。
また、新型ではリア主導の前後連動ブレーキが実装され、ブレーキペダルを踏むと状況に応じて最適な制動力が配分されるため、けっこうなペースでもほとんどリアブレーキのみで走れてしまう。ちなみにこれらの便利なサポート機能はライダーの意志でオフにできるため、操る楽しさを損なうこともないのだ。
◆ひと皮剥けば現れるもう一つの顔
世代を重ねて扱いやすく快適になっていくムルティストラーダだが、ひと皮剥けばもう一つの顔が現れる。それはドゥカティの血筋とも言うべきスポーツバイクとしての側面だ。
スロットルを開けた瞬間に躍動するV4エンジンのパワーは圧倒的で、フロント19インチを感じさせないハンドリングの切れ味や軽快なフットワークは純粋なスポーツモデルに見劣りしないほど。それでいて電子制御の後ろ盾があるから、どんなコーナーでも自信を持って挑んでいける。どこにも曖昧さがない精緻な走りはMotoGPでの大成功をもたらしたドゥカティならではだ。
オフロードではオプションのスポークホイールにデュアルパーパスタイヤを履いた仕様でトライした。「エンデューロ」モードに切り替えることでエンジン出力は114psに抑えられサスペンションも不整地向けのしなやか設定に。ABSやトラコンの介入も最小限となるため、コーナーでは後輪を軽く流しながら立ち上がるアドベンチャーらしい走りも楽しめてしまう。
また、レーダーによって自動追尾してくれるクルコンや前方衝突検知などのサポート機能も手厚く、特に長距離ツーリングや悪天候で疲れているときほど頼りになる。「常に最高のツーリングバイクを目指す」と熱く語ってくれたドゥカティ開発陣の言葉どおり、一段と進化したムルティの魅力を存分に楽しむことができたのだった。