「危険水域」は何%? 内閣支持率が政権に与える影響は
安倍政権の支持率が低下していると報じられています。7月中旬までに新聞やテレビなどメディア各社が行なった世論調査の結果によると、内閣支持率は45~48%とバラつきがあるものの、軒並み50%を切り、政権発足以来の最低水準を記録。菅義偉官房長官が「自民党がおごり始めたと国民が不信感を抱いている」と襟を正す考えをあきらかにするなど、政府与党内にも衝撃が広がっています。支持率の低下は、政権運営や政策決定に大きな影響を与え、安倍首相自身も第1次政権では支持率低迷に翻弄された経験があります。「内閣支持率」はなぜ政権に影響を及ぼすのでしょうか。
小泉政権時代から調査回数が増える
その理由のひとつは、政治環境と内閣支持率の性格の変化です。 内閣支持率が大きな意味を持つようになったのは1990年代後半からといわれています。世論調査は戦後から実施され、支持率は46年の第一次吉田政権時代から発表されていますが、調査回数は少なく、今ほどその数字も重要ではありませんでした。自民党が単独与党の「55年体制」では、首相は支持率よりも党内政治を重視、支持率が低くても派閥を掌握すれば政権を維持することができたからです。しかし、その後政治環境が大きく変わり、政権側は「世論」の動向に敏感になります。最大派閥出身の首相でも支持率が低迷すれば退陣に追い込まれるようになったのです。 『世論調査と政治 数字はどこまで信用できるのか』(講談社+α新書)によると、内閣支持率の調査回数が増加したのは01年の小泉政権以降とされています。新聞各紙や通信社、テレビ局などの大手メディアは月ごとに支持率調査を行い、大きな政策や政治的出来事があれば緊急世論調査を実施し、すぐに支持率を発表するようになりました。 朝日新聞は第1次安倍政権時代、07年夏の参院選前から毎週1回の世論調査を11週連続で実施し、そのたびに支持率を発表しました。支持率の低下は政権にとって一大事となり、支持率回復のためにあらゆる対策を打ち出さなければ安定した政権運営ができなくなったのです。逆に、小泉政権のように支持率が高ければ、党内に反対勢力がいても思い通りの政権運営を行うことができるわけです。調査したメディアによって数字は異なりますが、例えば時事通信社の調査では、歴代最高支持率は小泉政権時代の78.4%、最低は竹下政権時代の4.4%となっています。