「危険水域」は何%? 内閣支持率が政権に与える影響は
「危険水域」と「退陣水域」
なぜ政治家はこれほど「世論」を気にするようになったのでしょうか。 最大の理由は96年の総選挙から導入された小選挙区制です。複数の候補者が当選する中選挙区制と違って、ひとつの選挙区から1人しか当選できない小選挙区制は世論の風向きの影響をもろに受けます。また、小選挙区制ではその選挙区で与党を代表するただ1人の議員となるため、内閣と考えが違うとは言いづらい。与党の議員にとって、「内閣の評価」である内閣支持率は選挙の当落に大きく関係するようになったのです。07年に誕生した福田政権は支持率の低迷などによって退陣を求める声が与党内からも上がり、在任わずか1年で辞任。その後の麻生政権、民主党による3政権も支持率低下に苦しみました。一般的には支持率が30%を下回ると「危険水域」となり、20%を下回れば「退陣水域」とされています。 もっとも、世論調査に批判の声があるのも事実です。世論を気にするあまり、国民受けする言葉ばかりが政治にはびこるようになったポピュリズム化などはそのひとつといわれます。また、メディアの論調によって結果にばらつきがあるほか、固定電話に電話して行う現在の調査方法では携帯電話しか持たない若い世代の考えを反映できていないという見方もあります。
その一方、世論調査には民主政治を補完する機能があるともいわれています。有権者の考えを示す方法は選挙ですが、選挙には手間もお金もかかるので簡単に行うことはできません。そのかわりに、世論調査を有権者の意思を示す「国民投票」として使い、民意とするわけです(『世論調査と政治』より)。問題もありますが、世論調査は民主政治の手段のひとつでもあるのです。第一次政権で支持率低下に苦しんだ安倍首相は、支持率低下という「民意」にどう答えるのでしょうか。 (真屋キヨシ/清談社)