<春に駆ける’23センバツ専大松戸>第2部・支え/1 担任教諭、勝利導く雰囲気作り クラスで応援「一体感」 /千葉
「今までに感じたことのないストレスがかかるかもしれません。それすらも楽しめるといいですね」 専大松戸の小阪正明教諭(30)は昨秋の関東大会の直前、クラスの日直とのコミュニケーションに使っている日誌に赤字でこう書き込んだ。野球部に所属する渡辺真翔(2年)が「甲子園を目標にして入学したので全員で勝ち取りたい」とつづったことに対する返事だった。 小阪教諭はスポーツコース(S類型)の2年生の担任を務める。運動部の有力選手が集うS類型は3年間クラス替えがなく、担任も持ち上がることが多い。2年生のクラスには15人の野球部員が所属しており、小阪教諭は高校入学時から、その苦悩や成長を見守ってきた。 教員生活で初めて受け持った担任ということもあり、今の教え子には特別な思い入れがある。学級づくりで意識しているのが、部活動の垣根を越えた「一体感」だ。大会直前のホームルームでは、それぞれの部の主将が全員の前で意気込みを話す時間を設け、週明けには結果の報告をしてもらう。そうすることで、自然と仲間同士で支え合い、勝利を目指そうという雰囲気を作ろうと心がけている。 センバツ出場に向けた大一番となる関東大会準々決勝の作新学院戦。通常授業の日だったが、小阪教諭はクラスメートが応援に行けるよう学校と調整し、埼玉県営大宮公園野球場のスタンド席に全員が駆けつけた。級友たちの声援を背にして勝利を収めた野球部の大森准弥主将(同)は後日、ホームルームで「あの応援がなければ勝利はなかった」と感謝した。 若い小阪教諭は選手たちにとってお兄さんのような存在だ。印象を尋ねると、「友達のような先生」「今まで出会った先生の中で一番同い年のような感覚」といった言葉が返ってきた。休み時間には、校庭で一緒に野球をすることもある。 逆に小阪教諭の目には、教室で接する野球部の選手たちはごく普通の高校生に映る。だが、真剣勝負のグラウンドでは表情が一変する。「学校とは違う一面に驚きますが、本当にかっこいいと思います」と小阪教諭。甲子園という大舞台での教え子たちの更なる成長を願っている。=つづく ◇ 3月18日に開幕する選抜高校野球大会に向けて練習を重ねる専大松戸(松戸市)。夢舞台への切符は選手だけの力で勝ち取ったわけではない。チームを支える人たちを紹介する。(この連載は近森歌音が担当します)