「5月以降の米国株は意外に底堅い」と見るこれだけの理由
だが、バイデン政権によるインフレ抑制法(2022年8月成立)でやや拡張財政が和らいだ結果、2024年3月には6%前後まで改善している。現在の財政赤字についての評価はさまざまだが、筆者は同国の財政赤字は持続不可能な状況に陥っていないと考えている。 また、5月1日に結果が判明するFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利の据え置きが確実視されているが、2022年6月に開始された量的引き締め(QT)のペース減速が決まる可能性が高い。QTのペース減速はすでに市場に織り込まれているが、FRBの引き締めペースの変更はアメリカ国債市場の需給を改善させ、長期金利上昇を抑制する要因になりうる。
2023年10月に起きた国債市場の急落は、パニック的な「売りが売りを呼ぶ」という色彩が強い金利上昇を伴ってのものであり、当時は国債市場参加者がかなり近視眼的になっていた。このときの記憶が新しい中で、今後金利上昇局面が訪れたとしても、債券市場参加者は冷静に対処するのではないか。であれば、「インフレ懸念」に対して以前よりも冷静になっている同国の株式市場は、堅調な企業業績を材料に、年後半は底堅く推移するだろう。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
村上 尚己 :エコノミスト