「5月以降の米国株は意外に底堅い」と見るこれだけの理由
もし、サービス価格の高まりが「アメリカ経済が強すぎる」ために起きているなら大きな問題である。だが、1~3月期のアメリカの国内需要は総じて安定に向かっている。個人消費は2023年後半には年率3%を超える伸びだったが、2024年に入って同2%台の伸びに落ち着いている。 また、労働市場では、移民流入が増えたことも後押しする形で雇用者数が大きく増えている。だが、求人数の減少が続くなど、労働市場の需給面での逼迫感は引き続き改善していると判断される。また、3月分のサービス価格の上振れについても、内訳は自動車保険料の大幅な上昇がかなりの部分を占めており、サービス価格上昇が幅広い分野で広がっているという兆候は限定的である。
以上を踏まえると、アメリカの高インフレが今後も続く可能性は高くない。そうであれば、2%インフレへの回帰は想定よりも3カ月程度後ずれはしたものの、インフレの減速基調は変わっていないことになる。同国の10年国債金利は4月25日には4.7%台まで上昇しているが、FRBの利下げ先送りへの懸念がもたらす、一段の金利上昇余地は限られそうだ。 もう1つ、アメリカの債券市場で金利上昇要因として意識されているのは、同国の財政だ。大幅な財政赤字による景気刺激策によって今後も高インフレが定着、これが金利上昇要因になる点だろう。
政府の財政赤字拡大は前トランプ政権から始まったが、バイデン政権となってからも大幅な財政赤字が続いている。11月5日の大統領選挙でどちらが勝利しても、財政政策が緊縮方向に転換する可能性は高くない。こうした債務拡大・財政悪化による「財政プレミアム」が高金利・高インフレを定着させるシナリオへの懸念は、今後も簡単には払拭されないだろう。 ■量的引き締めのペース減速も長期金利抑制要因に ただ、一方でアメリカ連邦政府の財政赤字は、経済成長の上振れによって税収が増加したこともあり、2024年に入ってからは若干改善が見られる。2023年半ばに連邦政府の財政赤字はGDP比で約8%まで拡大した。