「僕はまだ割り切れてない」プロ入りを懸けた勝負の1年…元U-18日本代表・筑波大エリート大学生はなぜ“ヘッドコーチ”との関係性に悩んでる?
三笘薫をはじめ、多くの日本代表選手と指導者を輩出してきた名門・筑波大学蹴球部。今季から、実質トップチームの指揮を執るのが大学4年生の戸田伊吹だ。現役大学生ヘッドコーチ就任の舞台裏に迫った(全2回の後編) 【画像】「ホントに大学生?」「将来、有名になりそう!」名門・筑波大サッカー部でヘッドコーチに抜擢された柏レイソル出身の現役大学生を見る…!前任者は、あの平山相太(20枚超) 「難しいです、本音を言ってしまえば……」 こう明かすのは、関東大学サッカーリーグ前年度王者・筑波大4年生の田村蒼生(そうき)だ。 この春から、同期入学の戸田伊吹がトップチームの実質的な指揮を執るヘッドコーチに就任した。創部128年目の蹴球部においても非常に稀な出来事であり、小井土正亮監督から信頼を置かれる親友に尊敬の念を抱いていた。ただ、同時に目に見えない隔たりも感じていた。
「また4年間も伊吹とサッカーができる!」
田村にとって戸田は特別な存在だった。柏レイソルU-15でチームメイトとなり、そこからU-18、大学と、縁が続いてきた。 「中学の時からプライベートでもよく一緒に遊んでいました。一緒に筑波大に進むことが決まったときは、『また4年間も伊吹と一緒にサッカーができる! 一緒にプロを目指せる! 』と心の底から嬉しかった」 彼らが高校3年生の頃は、新型コロナウイルス感染症の影響で何かと制限が多い時期だった。それだけに狭き門と呼ばれる同大・体育専門学群の推薦入試を共に突破できた喜びはひとしおだった。 「昔から伊吹はピッチ内外ともに全体が見えていて、状況に応じたプレー選択や立ち振る舞いができて、すごく大人に見えた。僕が子供なのもあるかもしれないのですが、いつも頼りになる存在で中学、高校、もちろん大学に入ってもずっとリスペクトしていました」 一方の戸田も「蒼生はずっと年代別日本代表に入っていて、常に僕の先を行く存在だった。だからこそ、信頼もしていたし、負けたくない存在だった」と語っている。 お互いが鼓舞し合い、切磋琢磨してきた6年間。その関係は筑波大での4年間でさらに濃いものになるはずだった。 戸田が自らの決断を田村に伝えたのは、大学1年時の秋のことだった。 「俺、選手をやめて指導者になる」 田村の自宅に同じ推薦入試組の仲間たちを集め、全員の前でこう伝えた。 「指導者になると決断した時に、真っ先に浮かんだのが蒼生の顔でした。申し訳ない気持ちと、道は違うけどこれまでと変わらず一緒に筑波大で成長していきたい、と」(戸田) 田村は咄嗟に「止めなきゃ」と心の中で叫んだという。だが、覚悟を決めた親友の顔を見て、言葉が出てこなかった。 「誰よりも伊吹のことは知っていました。サッカーに対してどこまでも真っ直ぐで、指導者を目指していたことも。熟考した上での答えであることはすぐにわかった」 言葉が出なかったが、涙は溢れた。もう一緒にピッチに立つことはないことを意味する決断。目の前が滲んで見えなくなっていく。 精一杯の声を振り出して「一緒に頑張ろう」と伝えた。でも、その日の夜は眠れなかった。次の道に向かって走り出す戸田を素直に応援できない自分がいた。
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