袴田巌さん「ついに勝った」 再審無罪判決後初の公の場、静岡での報告会であいさつ
現在の静岡市清水区で1966年、一家4人が殺害された事件で死刑とされ、やり直しの裁判（再審）で無罪判決が言い渡された袴田巌さん（88）が29日、静岡市で開かれた集会で「無罪勝利が完全になった。ついに完全に全部勝った。今日はめでたく、皆さんの前に出てきた」と述べた。袴田さんが公の場に出席するのは26日の判決後初めて。 【動画】袴田巌さんがあいさつ 袴田さんは支援者の押す車椅子に乗って集会会場を訪れ、支えられながらも歩いて壇上に立った。マイクを握ると「無罪勝利」という言葉を重ねて口にし、姉ひで子さん（91）から「ありがとうって言いな」と促されると、1分50秒ほどの発言を「ありがとうございました」で締めくくった。
袴田さんは長期拘束の影響で「心神喪失の状態にある」と判断され、再審公判への出廷が免除された。妄想の世界にいることが多いとされるが、この日の様子に弁護団事務局長の小川秀世弁護士は「（再審無罪になったことが）巌さんに伝わっていた。すごくうれしい」と涙を流して喜んだ。 ほかの弁護団員も活動を振り返った。田中薫弁護士は、第1次再審請求審で検察官が一つも未提出証拠を開示せず、第2次請求審になって600点もの証拠が出てきたことを挙げ「国民の税金で作成された証拠。全て国民のものだと認識したい」と指摘した。間光洋弁護士は「過ちを繰り返しているのに変わらない検察の責任をしっかりと問いたい。有罪立証の選択が間違っていたことも判決は明らかにしている」と語った。 現時点で検察官が控訴するかどうかを表明しておらず、無罪判決は確定していない。期限は10月10日。
「静岡から法改正を」県弁護士会が訴え
集会は、袴田巌さんの再審無罪に至る経過が不備を浮き彫りにした再審法（刑事訴訟法の再審規定）の改正を実現しようと、県弁護士会（梅田欣一会長）が主催。あるべきルールを早急に整える必要性を訴えた。 26日現在、県内では県議会と30の市町議会が再審法改正を国に求める意見書を可決している。県弁護士会によると、近日中に3市議会でも可決される見込み。残るは、静岡と浜松の両政令市の議会になるという。 賛同署名を寄せた県内の市町長は16人に増え、団体数は85団体に拡大した。県弁護士会の法改正実現プロジェクトチームの大多和暁座長は、死刑事件で再審無罪が言い渡された5件のうち袴田さんを含めた2件が県内の事件だとして「静岡の地から、法改正の大きなうねりを起こしたい」と活動への協力を呼びかけた。 また、法改正の早期実現を目指す超党派の国会議員連盟に自民党の石破茂新総裁が所属していることに触れ「追い風」と紹介した。
袴田さんの発言要旨
私が袴田巌でございます。待ちきれない言葉でありました。無罪勝利が完全に実りました。ついに完全に全部勝った。今日はめでたく、皆さんの前に出てきた。無罪勝利ということになります。なかなか数字がなかった。勘定したが、無罪勝利の数字というものが消されちゃっている。こがねみそ事件で無罪勝利ということで、検察も認めた。これからの闘いにおいては政治的に社会的に地位を守っていく。これが根本的なものでございます。どこまで闘い勝てるか。よろしくお願いします。ソンケイテンサイテンサイ、ソンケイテンサイテンサイ、ソンケイテンサイテンサイ。（姉ひで子さんから「ありがとうって言いな」と促され）ありがとうございました。
