「分かりやすい多様性になっていない?」バンクーバーファッションウィークに出場の日本発ブランド、モデルたちが伝えたいこと
北米で2番目に大きなファッションイベント、バンクーバー・ファッション・ウィーク(以下VFW)。VFWがコンセプトに掲げているのは「ダイバーシティ」だ。人種や国籍、ジェンダーにとらわれない表現を追い求めるさまざまなブランドがこのファッション・ウィークに参加している。 【全画像をみる】「分かりやすい多様性になっていない?」バンクーバーファッションウィークに出場の日本発ブランド、モデルたちが伝えたいこと 2024年4月、VFWより直接オファーを受け出場することになったのが、日本発のインクルーシブなファッションブランド「SOLIT!(ソリット)」だ。 VFWでは、一般公募などで選ばれた多様なモデル7人がSOLIT!のランウェイに登場する。当日ランウェイに登場するモデルのうち3人とSOLIT代表の田中美咲さんに、VFWへの思いを聞いた。
多様なメンバーが歩くランウェイに
SOLIT!は「誰もどれも取り残さない」ことを目標に掲げるブランド。片手でつけ外しできるマグネットボタンや深めのサイドスリットなど、セミオーダーの服を手掛ける。体のサイズや特性を問わず、どんな人でもファッションを楽しめる服作りをしている。 今回のVFWのランウェイには、いわゆるパリコレなどのメゾンブランドのランウェイを歩くようなモデルは登壇しない。それは、SOLITが「一般的なモデル体型の人や、訓練されたランウェイウォーキングができる人だけが着ても、その価値が伝わらない」と考えているからだ。 SOLIT!の思想への共感を第一条件に、障害の有無、セクシュアリティ、信仰、体型、国籍、年齢、経験などに関係なく、多様なメンバーが集まった。 この日のインタビューに参加したメンバーは、Moebaさん、ひわさゆうきさん、芳坂映由花さんの3人。 中部アフリカ出身のMoebaさんは、約5年前に来日し、現在は商船三井ロジスティクスの会社員だ。母国の不安定な政治情勢に命の危機を感じて、亡命してきた難民でもある。 「日本だったら英語が通じると思っていたけれど、来てみたらどこに行ってもほとんど日本語しか通じなくて驚きました(笑)」と語る。 編集部より:取材日の3月12日はランウェイモデルの一員として取材に応じてくれたMoebaさんだが、渡航直前のにカナダ大使館より入国拒否を受け、撮影モデル兼コレクションの企画メンバーとしての参加となった。難民という背景から、前もって渡航準備を進めてきたというが、Moebaさん本人の意思を尊重し本記事では取材当時の声をお届けする。 ひわさゆうきさんは、アパレル企業やスポーツブランドでキャリアを積んできた、無類のファッション好き。そして、幼い頃から顔の右側に太田母斑という青あざがある。自身の疾患をコンプレックスに感じていた時期もあるというが、現在では「個性」「一部」と捉えていると明るく言う。 芳坂映由花さんは今回のランウェイにおいて数少ないモデル経験者だ。ファッションショーや広告等に出演するほか、俳優としても活躍している。 交通事故によって大きな傷跡を抱えた後天性身体障害者であることを明かす一方で、発達障害(ASD・ADHD)当事者、虐待サバイバーあることも明かしている。