「P連はPTA会長の立身出世のためにあるのではない」解任された元副会長が「会長の勘違い」に釘をさす
◆「P連退会は副会長として不適切」→解任
こういった矛盾を見かね、ワタルさんのPTAでは以前から「P連を退会したほうがいい」という声が高まっていました。それでもワタルさんは、なんとかP連を改革しようと奮闘していたのですが、2023年の末には同地区の別の小学校のPTAがP連退会を表明したこともあり、ワタルさんの小学校のPTAも、P連退会を免れそうにありませんでした。 ワタルさんは内心、困っていました。というのは、ワタルさんは2024年度も市Pの副会長を引き受けていたからです。もしここでP連を退会すれば、副会長に空席が生じて同地区のPTAに迷惑がかかりかねない。そう思ったワタルさんは、市Pの事務局に会則を確認のうえ、上の子が通う中学校のPTAと調整を行い、もし小学校のPTAがP連退会を決議したときは中学校のPTA役員として市Pの副会長をやれるよう所属先変更を申し出て、内諾を得ました。 ところが、話は思わぬ展開に。新学期に行われたPTA総会では、やはりP連退会が決議されたため、ワタルさんが市Pに退会の旨を伝えたところ、翌日市P会長から電話がかかってきて、「副会長の辞任を勧告する」と告げられたのです。ワタルさんが「勧告なら固辞する」と答えたところ、会長は「それなら会則に則り解任する」と回答。「P連退会は、副会長として不適切な言動だ」というのが、その言い分です。 「P連退会は会員の総意として総会で決まったことであり、僕個人の意見ではありません。会長には『小学校のPTA会長としてではなく、中学のPTA会員として副会長を続ける』とお話ししたんですが、聞いてもらえませんでした」(ワタルさん)
◆自己実現のための場? 「上ではなく横を見てほしい」
P連ではなぜこのように、声をあげる人が排除されやすく、改革が実現しづらいのでしょうか。ワタルさんは「PTA会長が勘違い」しやすいことも、一因ではないかと話します。 「うちのように小さな学校のPTA会長でさえ、自校や他校の行事や会議に行けば来賓席に座らされて、先生方や関係者からは『会長』と呼ばれ、周囲から持ち上げられます。そうすると、自分でよほど意識していないと、勘違いして王様になってしまうんです。その成れの果てが、P連で上へ行きたがる人たちでは。政治家との会合や、会議に出席したことを、自分の実績か何かのように思って、アピールしている。 PTAやP連は、会長や役員の『立身出世』のために存在するわけではありません。PTAを支える一般会員の声や思いを、然るべきところに届けるため、そういった立場にあるだけのこと。そこをはき違えられては困ります。P連の上層部は上(上部団体)ばかり見ていないで、もっと横を見てほしい。隣人(会員)を愛してよ、ってことです」(ワタルさん) おそらく似たような状況のP連は、日本中にたくさんあるのでは。P連は何のためにあるのか、一部の保護者の自己実現のための会になってはいないか――。ワタルさんの話を、いま一度、P連見直しのきっかけにしてもらえたらと願います。 この記事の執筆者:大塚 玲子 プロフィール ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
大塚 玲子