「ラグビーかサッカー、どっちが簡単か」「好きなものを、好きな時に」田村優が育成年代の子供達に伝えた、一流になるための条件
ダン・カーターの技術のベースは「裏庭で作った」
トップアスリートの育成年代へのメッセージは、多岐にわたる。 日本代表の主将としてのキャリアが豊富なリーチ マイケルは、どの年代にも「計画を立てることの大切さ」を説く。たくさん突進してたくさんタックルする裏側では、その時々の体調に合わせて自らを追い込んだり、休んだりと自ら立てた「計画」に沿って動いている。 元ジャパンの斉藤祐也氏が運営するスポーツ教室「ボールパーク」では、チャレンジ精神を貴ぶ会の目的を踏まえてこう話していた。 「楽しさを見つけることが大事。また、自分の仲間を大切にするといいことが起こると思います。そして、失敗を恐れずに、どんなことでもチャレンジし続ける。僕はいっぱい失敗して、(所属先の東芝ブレイブルーパス東京で)優勝できました」 やはり楽しむことの価値を謳うのはダン・カーター。あふれる技巧と冷静さで、ニュージーランド代表のスタンドオフとしてワールドカップ優勝を経験したレジェンドはこのように語った。 「私は子どもの頃、実家の裏庭で友達とラグビーをしていました。その頃から自由にボールを投げ、操っていた。いまある技術のベースのほとんどは裏庭で作ったと思っています。リラックスするのが大切。ラグビーはストレスやプレッシャーのかかるスポーツですが、そんななか自分自身をリラックスさせようと心がけてきました」
「ラグビー以外の時間」の過ごし方の重要性
リーチと同級生でもあり、カーターと同じポジションの田村は、よそ行きの言葉を使わず正鵠(せいこく)を射る。 イベントの趣旨も手伝い、話題は技術論に及ぶ。役目の一つとなるプレースキックについては、自分らしく、かつ本質的な型を探すことが肝要だと訴えた。 「(足とボールが)どの角度から当たっても、蹴りたい方向にまっすぐ足と体が出ているか(が肝)。正しい方向に、足と体を持っていければ、物理的にはそこに必ずボールが飛んでいく」 初期にしていたゴールキックの練習は、「適当」とのことだ。 「それこそ、(フォームなどが)固まってきたのはここ 4~5 年。それまでは自分の蹴り方を見つけていく作業です。いまでも毎シーズン毎シーズン、(形は)少しずつ変わっていくので。だいたいの大枠は見つかってきましたけど、試行錯誤し続けている感じですね」 少年に「キックを遠くに飛ばすには」と聞かれると……。 「(身体が)大きくなったら飛ぶようになる。それよりも、10メートルでも15メートルでも、正しいスキルで正確に届けることのほうが大事。それは、パスでもキックでも。いまでも、僕はそう思っています」 一貫して説くのは、各々が自力で基本技術を得ることの勧めだ。 「僕はあんまり、指導とかをするのが好きじゃないんです。まず、僕が指導されるのも、好きじゃない。もちろん、アドバイスは得ますけど。先生、コーチが与えてくれる大枠を、どういうふうに自分のものにしていくかはみんな次第。その作業が、結構、大事かなとは思います」 集団競技としてのラグビーの真髄にも触れた。勝つために必要な行動を問われると、「ラグビー以外の時間でチームメートと何かすることが重要」とした。 「遊びに行ったり、買い物に行ったり、ご飯を食べたり、お酒を飲んだり。そこの満足度がないと、ラグビーは、勝てないかな、と思います。週の頭の月曜日は、皆、練習なんかしたくない。でも、この前の土日は楽しかったね……と言いながら、すっと(月曜日以降のスケジュールに)入っていく。それが毎週。そういうことがあると、(プレー面の)話のキャッチボールもしやすくなる」