所得減税の実現迫る玉木国民代表、与党過半数割れで政策論争の主役に
旧民主党政権で総務相を務めた片山善博・大正大学地域構想研究所所長は、国民が支持拡大に成功した要因として、政策に反映される機会が限られていた若者の声を「選挙という公的なプロセスで取り込んだ」ことを挙げた。「看板政策」である基礎控除などの拡大については若年層ではなく、「やり方によっては高所得者が一番得をする」と課題も指摘。「それでもあえてやりますかという対話が必要だ」と話す。
財務官僚出身の「明るい好青年」
55歳の玉木氏は香川県出身。東大法学部を卒業し、1993年に旧大蔵省(現在の財務省)に入省した。同期には岸田文雄政権で官房副長官などを務めた自民党の木原誠二氏らがいる。
玉木氏が入省1年目に配属された主計局で上司だった元国税庁長官の星野次彦氏は当時を振り返り、「明るい好青年で、人柄も今と変わっていない」と評した。「年末の予算編成でみんなが疲れていても、冗談を言って笑わせてくれるような、面白い若者だった」という。
政治の道を志して財務省を退官したのは2005年。一度の落選を経て旧民主党が政権交代を果たした09年の衆院選で香川2区から立候補し、初当選した。与党として国会議員生活を始めた玉木氏だが、同党は12年の衆院選で大敗。その後、10年以上の野党暮らしの中で、20年に現在の国民民主党を立ち上げ、代表に就任した。岸田政権下で22年度予算に賛成した経緯が、与党との急接近につながっている。
「新しい政治文化」
「尽凡心開天地(凡心あるところに天地が開ける)」。議員会館の事務所に飾っているのは、同じ香川県出身で旧大蔵省の先輩に当たる大平正芳元首相の書のレプリカだ。大平氏は「保守本流」と呼ばれた派閥、宏池会を率いた。同氏を敬愛し、後継者を自負する玉木氏だが、国民が綱領で目指すのは、穏健保守からリベラルまでを包摂する「改革中道政党」だ。
国民側は連立政権入りを否定し、政策ごとに協議する姿勢を一貫して強調する。与党とは年内にも取りまとめる補正予算や税制改正で基礎控除額の引き上げなどの実現を求める構えだが、立民や日本維新の会とは政治資金規正法の再改正や国会改革で連携していく方針だ。