テレビと新聞の関係をどう見る? メディアの「集中排除原則」から考える 曽我部真裕・京都大学大学院教授
日本のテレビ局には全国紙の名前を冠したものが少なくない。キー局で言えばテレビ朝日がそうであるし、大阪の準キー局の毎日放送や朝日放送、読売テレビなど、各地に例がある。また、各局のニュース番組にも特定の全国紙の関係者が出演するし、資本関係でも、全国紙を筆頭株主にもつキー局(の持株会社)は多く、両者の関係は深い。これはテレビ草創期に新聞社が主導的な役割を果たした歴史に由来する。 しかし、外国では、このように大手新聞社と大手テレビ局が、資本的にも番組的にも深く結びつくことが規制されていることが多い。
「マスメディア集中排除原則」と「県域免許の原則」とは?
日本にもこのような経営面からの規制がないわけではない。日本ではこのような規制は「マスメディア集中排除原則」(集中排除原則)と呼ばれ、放送法に規定されている。近年は、放送局の経営不振を背景に、「例外」が増設され規制緩和が進んでおり、かつその内容は非常に複雑であるが、もっとも基本となる規制は、「複数局支配の禁止」である。 複数局支配の禁止とは、要するに、何人も複数の放送局を支配することはできないということである。例えば、放送局Aが同じ地域の別の放送局Bに対して10%超の資本参加をしたり、あるいは、他の地域の放送局Cの3分の1超の資本参加をしたりはできない。同様に、他業種の企業も複数の放送局の株式をこれらの限度を超えて取得することはできない。 これは,特定の者が放送を独占することのないようにし、放送の「多元性」「多様性」を実現しようとする放送法の基本原則に基づくものである。 しかし、こうしたルールに触れない限り、全国紙も放送事業者と資本関係等をもつことができるので、冒頭に触れたような日本の現状が生まれている。なお、実は、同一地域でテレビ、ラジオ、新聞の三事業を支配することは一応禁止されているのだが、実際には例外が広く認められており、外国と比較して必ずしも厳しい規制ではない。 集中排除原則と関連して、「県域免許の原則」というものがある。いわゆる放送局の免許は、放送対象区域が定められ、この区域ごとに免許が認可される。東名阪の三大都市圏については広域圏とされているが、原則としては、放送対象区域は都道府県単位で定められる。これが「県域免許の原則」であり、放送法の基本原則である「地域性」に基づくものである。