カルロス・ゴーン被告、なぜ「レバノン」へ?
保釈中の身でありながら日本を出国し、レバノンへ行った日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告。公表した声明文で「政治的迫害から逃れてきた」「これでようやくメディアと自由にコミュニケーションをとれるようになった。来週が始まるのを楽しみにしています」と前向きな文言を並べたゴーン被告ですが、そもそも逃避先としてレバノンを選んだのはなぜなのでしょうか。
青年期を過ごした場所
ゴーン被告と言えば、タイヤメーカーのミシュランに勤めた後、仏自動車メーカーのルノーに副社長として迎え入れられ、その後に日産自動車の再建に取り組んだことで知られています。 しかし、その生い立ちはあまり知られていません。米ブルームバーグなどによると、ゴーン被告の両親はレバノン人です。ゴーン被告自身はブラジルで生まれ、レバノンで育ちました。レバノンでは、いまでも不動産やブドウ園に投資するなど、ビジネスの象徴であり、国民にとってはとても大きな存在であり続けています。全国郵便切手に彼の画像が使用されるほどだそうです。
「地元」ベイルートで人気者
米ニューヨークタイムズによると、ゴーン被告はフランス・ブラジルと同様にレバノンにも市民権を有しています。青少年期の多くの時間をベイルートで過ごしたことから、地元での人気は格別のもののようです。ゴーン被告が逮捕された初めのころから国を挙げて被告への支持を示してきました。駐日レバノン大使が東京拘置所を訪れて被告と接見し、集まった報道陣に「無実だ」と言ったほどです。 首都ベイルートでは2018年11月にゴーン被告が逮捕された直後から、「私たちはみんな、カルロス・ゴーンです」と書かれた看板が掲げられ、国民が被告と連帯していることを表明しました。
「レバノン」とは
レバノンは、西側が地中海に面する小国です。北と東の国境はシリアと、南はイスラエルと接しています。外務省のHPなどによると、面積は約1万平方メートルで岐阜県と同じくらいの国土を持ち、人口は約610万人(2018年推計値)です。民族はアラブ人が95%と大半を占めます。 主要産業は金融業、観光業、食品加工業などです。日本には2018年12月現在207人のレバノン人が暮らし、レバノンにも104人の日本人が暮らしています(2017年10月現在)。
以上みてきたように、ゴーン被告にとってレバノンは「多面的につながりがある国」です。なぜレバノンに向かったのかは本人に聞かなければ分かりませんが、逃避先となりうる素地が十分にあった場所、ということは言えそうです。