大男に挟まれた戸澤陽と“100%英語”スピーチのブル中野…レッスルマニア前夜に見たWWEと日本人レスラーの“プロ意識”【清野茂樹アナ連載#11】
ブル中野のプロフェッショナリズムと米国に挑む日本人レスラーの“真髄”
また、SMACKDOWN終了後に行われた「ホール・オブ・フェイム」に出席した、ブル中野のスピーチにも心を奪われました。この受賞を長い間待っていたこと、30年前に言葉が通じないアメリカで苦労したこと、生まれ変わってもブル中野になりたいなど、すべて英語で約5分にわたってスピーチしたからです。 過去、アントニオ猪木をはじめ4人の日本人レスラーが受賞して、この式典でスピーチしていますが、100%英語を使ったのは彼女が初めて。冒頭の英語を聞いて、てっきり途中で日本語に切り替えるものだと思い込んでいたので、驚かされました。聞くところによると、原稿を完全に暗記して臨んだそうです。慣れない英語で、しかも2万人の観客の前ですから、舞い上がって忘れたり、言葉に詰まったりしても不思議ではありません。失敗してもやり直しもきかない一発勝負であれほど長く英語で話すなんて、喋りを仕事にしていてもまったくできる自信がありません。 さすがは「女帝」と呼ばれた人です。きっと彼女は、自分の気持ちをダイレクトに伝えたいという思いの他に、過去に誰もやっていないことをやりたかったのではないでしょうか。登壇者の中で唯一、英語を母国語としないスピーカーでしたから、アメリカのファンも驚いたことでしょう。話し終えた後にはスタンディングオベーションが巻き起こったことは言うまでもありません。 戸澤陽にもブル中野にも共通にしているのは、周囲を見たうえで自分の特技や特性を活かし、きっちりやり抜くプロフェッショナリズムです。他民族、他人種が共存するアメリカで勝ち抜くにはどうすればいいか?相当に考え抜いていることが予想できます。今年の「レッスルマニア」に出場するASUKA、カイリ・セイン、イヨ・スカイも同じ。スポーツエンタテインメントの世界では、観客という不特定多数が評価を握っているので、彼らはスポーツ以上に難しいことに挑戦している気がします。 お祭りである「レッスルマニア」の実況について、私はまず楽しさを最優先に伝えようと考えています。派手な演出やストーリーも見所ですが、この祭典が40回も続いてきたのは、徹底したプロフェッショナリズムが最も大きいのではないでしょうか。試合はもちろん、練習、健康管理、ファンサービスなどを徹底するスーパースターたち。そして、その裏にある過酷な競争。その中で生き残る日本人たちの活躍を今年はしっかり伝えなければと、前夜祭のSMACKDOWNを見て気を引き締め直した次第です。 文/清野茂樹 (C)2024 WWE, Inc. All Rights Reserved.
ABEMA TIMES編集部