企業が増えて人材不足 北九州のコンタクトセンターの悩み
製鉄など重工業発展の歴史を持つ北九州市で、顧客対応の業務を行う事業所「コンタクトセンター」の集積が進んでいる。集積のきっかけの一つに、災害リスクが低いとされる北九州市の特徴が垣間見える一方、新たな課題も生じているようだ。 12月25日、北九州市内とその周辺に立地する企業が、「北九州コンタクトセンター協議会」を立ち上げた。協議会の構成企業は、富士通コミュニケーションサービスやNTTマーケティングアクト、ゼンリンなど10社。IT系の企業も多く、北九州が持つ重工業という従来のイメージとは異なる顔ぶれだ。 コンタクトセンターとは、顧客と直接顔を合わせずにやりとりをする窓口機能をもった事業所のこと。従来は電話応対が中心だったのでコールセンターと呼ばれていたが、近年はメールやホームページ、FacebookのようなSNSを通じた対応が増えており、コンタクトセンターと呼ばれることが多くなっている。 こうした顧客対応業務以外に、データの入力や、人事・総務系の事務といったバックオフィス業務を含めて、市はコンタクトセンターと定義している。市内での関連企業の雇用は、今年4千5百人に達し、北橋健治市長が「基幹産業」と呼ぶほど、このところの伸び率が最も高い業種の一つだ。 集積の背景には、市の積極的な企業誘致活動がある。東日本大震災以降、北九州市は、大地震の原因となるプレートの境界から遠く、歴史的に大地震の被害が少ないという点を訴求してきた。協議会の一員の三井生命保険は、こうしたリスクの低さに注目して今年10月に新規進出した企業だ。 一方で、企業集積は進んだものの、新たな課題も見えてきた。進出が相次ぐ企業のニーズに対して、業務を担う人材の育成が追いつかず、慢性的な人材不足になっているという。このため協議会では、市と連携協力協定を結び、人材育成のプログラム提供や、女性が働きやすい環境づくりに取り組んでいくことにしている。 吉田充・協議会会長は記者会見で、「従来の『コールセンター』という言葉からは、苦情受け付けといったマイナスイメージを持つ人もいるが、実際の業務内容は多岐に渡っている。そうしたことを積極的にPRして、業界への関心を高めるとともに、子育て世代が働きやすい環境が作れるよう市に協力を求めていきたい」と語った。