「何て面倒くさい」京都人の本音と建前を探るカードゲーム誕生
「世渡り上手どすね」と褒めて、遠回しにウソつきだと指摘する――。そんな京都人の本音と建前の違いを見破るカードゲームが誕生した。「疑心暗鬼になる」と関心を集め、京都市のふるさと納税の返礼品にも採用された。(京都総局 山本貴大) 【図】ゲームに登場する京都人の本音と言い方の例
「京都人狼」。大阪市のコンテンツ企画会社「ない」と、京都市のデザイン会社「CHAHANG」が共同開発した。プレーヤーがそれぞれの正体を隠して狼人間を見つけ出す人狼ゲームをヒントにしている。 京都人ではない「よそさん」が「素直な京都人」の中に紛れた「いけずな京都人」を見つける。お題が書かれたカードに沿って会話を展開。例えば、「オシャレ ダサい」のカードでは、「独創的な服どすな」との言葉に隠された、「ダサい」という本音に気付けるかがカギを握る。 7月末に京都の土産物店などで1セット5500円(税込み)で販売すると、2日間で約200個が売れ、増産した。京都市も同月から、ふるさと納税の返礼品にしている。 X(旧ツイッター)では「なんて、面倒くさいゲーム」「めっちゃ面白そう」などの書き込みがあり、じわじわと注目が広がった。 開発のきっかけは、「ない」の岡勇樹社長(29)が「京都の『いけず』を体験できたら面白いのでは」と考えたことだった。 昨年11月、手始めに「いけずステッカー」を販売。着物姿の女将が表面で優しく建前を、裏面では怒りの表情で本音を話す姿を印刷したところ、約2900枚を売り上げた。セリフを考えるうち、カードゲームの発想が生まれたという。 ゲームは「京都産」にこだわった。題字は、京都市左京区の料理旅館の女将が書き、同市中京区の印刷業者が製造。イメージキャラクターは、同市下京区の扇子店の女将が務める。 岡社長は「ゲームを通じて、『いけず』には相手を傷つけないための気遣いがあることが分かるはず。言葉の裏にある奥深さに触れてほしい」と話している。
先祖代々の土地で敵作らぬ処世術
京都人が見せる本音と建前にはどういう意味が込められているのか。 龍谷大の泉文明教授(京都学)は「京都では先祖代々の近所づきあいが続いており、子孫が『村八分』にされて不利益を被らないための工夫として培われたのではないか」と指摘する。 応仁の乱や禁門の変など戦場となることが多かったため、できるだけ敵を作らない処世術として機能した可能性もあるという。 泉教授は「本音を直接言わないのは、『正直ではない』と思われるかもしれないが、実際には、京都人が生きるために生み出した知恵という側面が大きい」と話している。