<春へ一丸・’23センバツ慶応>知的障害生徒と合同練習 純粋な姿勢、刺激に 教える難しさも実感 /神奈川
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)への出場が決まった慶応が、積極的に行っている取り組みに、知的障害のある生徒と一緒に野球を楽しむ合同練習会がある。センバツ出場が発表された翌日の1月28日にも練習会が開かれ、選手たちは野球を教える難しさを感じたり、純粋に野球を楽しむ気持ちを思い出したりしながら、生徒たちと白球を追いかけた。【田中綾乃】 特別支援学校に通う知的障害のある生徒らが野球に触れる機会を増やし、いずれは甲子園に出場させたい。そんな思いから、東京都内の特別支援学校教諭の久保田浩司さん(57)が「甲子園夢プロジェクト」を2021年3月に立ち上げた。 全国の高校と合同練習会を重ねる中、プロジェクトスタッフに慶応大卒業生がいた縁で森林貴彦監督(49)に参加を依頼。22年1月に慶応との合同練習会がオンラインで実現した。甲子園出場経験のある高校との練習会は慶応が初めて。同3月に対面で実施し、慶応とは今回で4回目の練習会となった。 28日は全国から集まった生徒26人が参加。冒頭に生徒らからセンバツ出場を祝福され、選手らは笑顔で頭を下げた。選手と生徒で2人1組のペアを作り、ウオーミングアップから打撃練習、守備練習まで約3時間半にわたって交流を深めた。 安達英輝(2年)とペアを組んだ横浜市立二つ橋高等特別支援学校1年の菅野駿太さん(16)は「最初は緊張したが、優しく分かりやすく打撃を教えてもらえてよかった。甲子園では優勝してほしい」と満面の笑みで話した。安達は「(生徒たちの)心から野球を楽しんでいる姿を見て、『結果を出さなきゃ』と思いすぎて野球を楽しむ気持ちを忘れていたことに気づかされた」と振り返る。 森林監督は「教えてもらう側から教える側へ立場を変え、教えることや伝えることの難しさを感じてもらいたかった」と狙いを話す。一方で「選手たちは教えていたが、実は教えられてもいた。純粋に球を追いかける姿を見て、目の前の一球を一生懸命追う大切さに気づかされたと思う」とも語った。 慶応は今後もプロジェクトへの参加を続ける。プロジェクトには昨秋の県大会や関東大会で慶応を応援した生徒も多く、センバツも観戦に行く予定だという。気づきをくれた仲間のためにも甲子園での飛躍を誓う。