「戦争」だけが自衛隊の仕事じゃない 非軍事活動ムートワ(MOOTW)とは
自衛隊は国内のみならず、海外でも様々な活動をするようになりました。30年前、日本を守るために国内で訓練に励んでいた自衛隊は、今や、国際社会の平和と安定に貢献するために人道支援などで日常的に海外に出ています。この現象を理解する上で役立つ概念が、“Military Operations Other Than War”(MOOTW。ムートワ)です。 MOOTWは「戦争以外の軍事作戦」という意味で、軍隊が担う非軍事分野の活動の総称です。自衛隊は軍隊ではありませんが、様々なMOOTWを担える潜在力があります。ただし、自衛隊は法律によって活動の幅が限定されています。今後どこまで活動の幅を広げるのかは、国民の意思に委ねられています。
幅広い役割を担う潜在力がある自衛隊
日本の自衛隊は軍隊ではありませんが、組織や装備は諸外国の軍隊と同様であり、MOOTWをこなせる潜在力を多分に持っています。MOOTWは軍隊が行う作戦のうち、戦うこと以外を目的とした作戦を包括した概念で、約20年前に米国で提唱されました。 1995年6月、米統合参謀本部が発刊した文書、Joint Doctrine for Military Operations Other Than Warでは、MOOTWに関する概念などが整理されて紹介されています。MOOTWの目的は、戦争抑止や紛争解決、平和促進や民生支援です。具体的には国内での災害派遣はもちろん、海外での人道支援や平和維持活動(PKO)などが挙げられます(図表1参照)。戦争も含め、あらゆる事態に対応できる組織だからこそ、情勢が不安定な地域も含め、様々な場所で多様な役割を担うことができるのです。日本の国防を担う自衛隊に潜在力があるのもそのためです。
活動の幅に限界がある自衛隊
規律のある組織と良質な装備を擁する自衛隊ですが、MOOTWにおける活動の幅には限界があります。理由の一つは、今の法律では想定されていない任務があるからです。例えば、「訓練業務」。これまで諸外国の軍隊の“軍事力”に直接関係する訓練や器材を提供することは想定されてきませんでした。よって、例えばある国から「国内に残る地雷を処理するノウハウを教えて欲しい。器材を提供して欲しい」と依頼されても自衛隊が直接支援することはできません。そこで、地雷処理の分野においては、ノウハウを持つ自衛隊出身者が、「日本地雷処理を支援する会」(JMAS)などの非営利団体を立ち上げ、民間人という立場から支援しています。活動の根拠となる法律がないために、「できるのに、できない」。そうした状況に置かれているのが自衛隊の現状です。