日本人選手も在籍の台湾新興球団 “日本通”で知られる敏腕GM「魅力あるチームを作りたい」
「活力があり、フレッシュで温かみのある」チームを目指す
――怪我で無念の退団となった笠原祥太郎投手にはお別れ動画を作成。同じく怪我をした小野寺賢人投手は球場でファンとの交流会を実施。元NPBの呉念庭内野手や王柏融外野手にクローズアップした動画では、日本のファン向けに日本語字幕をつけた。歴史や選手へのリスペクトを感じる企画や、ファン目線に立ったハートフルな企画を行う理由は。 「海外の方が、台湾人や台湾の魅力は何かという話になると、『人情味』とか『人の温かさ』を挙げる方が多いので、台湾、特に高雄のいいところを野球を通じて伝えられたらいいなという思いがあります。球団の運営については、色々な評価の仕方はあると思いますが、私がファンの方々から言われて何よりも嬉しいのは、台湾華語でいう、「用心(心を込めて取り組んでいる)」という言葉ですね」 ――キャプテンをつとめた王柏融、途中加入の呉念庭はここからという8月末、怪我で無念の離脱。2人のチームに対する影響力は。 「新球団の発足段階において、看板選手は絶対必要ですからね。NPB経験を持ち、また代表チーム中心選手の二人の存在は、知名度の低い新人が大部分のうちにとって、とても大きいです。彼らの影響でチーム全体の注目度が高まり、それによって若手選手の露出度も高くなりました。興行面の戦略として、そうした点の相乗効果は期待していたとおりでした。今シーズン、2人は共に怪我で満足するシーズンを送ることはできませんでしたが、来年こそモヤとの3人による、真の『元パ・リーグ勢最強クリーンアップ』が実現することが楽しみです。ファンも期待していると思います」 ――看板選手や、成長著しい若手のホープに加え、拡張ドラフトやトレードで移籍してきた左腕の江承諺投手や張肇元捕手ら中堅選手も奮闘。ドラフトを見ると、異色の経歴の選手や、過去幾度も指名漏れした選手の指名獲得も少なくありませんが、この点について独自の戦略は。 「私は『環境が変われば、人は変わることができる』という信念をもっています。もう一つは、人間ってやっぱりモチベーションが大事ですよね。もしかしたら言い訳になるかもしれないですが、『いくら頑張っても使われない」』と思うと、モチベーションはなかなか上がらないじゃないですか。でも、環境が変わって、頑張ればチャンスがあるぞと思うことができれば、人って変われるし、頑張れるんですよ。私は、台湾球界には『第2の江承諺』になれる選手が、まだまだいると思っていますよ」 ――チャンスをつかんだという点では、独立リーグ出身の小野寺賢人投手が活躍しました。 「小野寺(賢人)くんが代表的な例だと思うのですが、日本には技術が高く、特にコントロールがいい投手が多いですよね。横田(久則一軍投手統括)コーチと話をした中で、多少、獲得のリスクはあるかもしれないけれど、『これくらいの投球技術、コントロールがあれば、台湾球界でも、ある程度通用するだろう』と感じました。それだったら、他球団のようにエージェントの紹介でアメリカや中南米から獲得するだけではなく、横田コーチのパイプや私の人脈もある中で、こうした獲得方法もあるのではないかと考えました。小野寺くんは、2勝4敗でしたが、6試合連続のクオリティスタートを見せ、防御率は2.31、WHIPも0.97ですよね。彼が投げた前期シーズン、打線が打てなかったので、後期だったら5勝くらいしていたかなと。グラウンド内でのパフォーマンスはもちろんですが、グラウンド外の彼のキャラクターもあって、ファンに愛される外国人選手になりつつあるので、あらためて、獲ってよかったなと思っています」 ――では、これからどんなチーム像を理想とされていますか。 「全ての人に好かれるチームづくりは難しいですが、活力があり、フレッシュで、温かみのある、そんな魅力あるチームを作りたいと思っています。チーム自体の雰囲気や環境が、いい影響を与えているのか、台鋼は、親近感のある選手やチアリーダーが多いとよく言われます。チームの良い雰囲気が選手たちを変える、そんな優れたチーム文化をつくりたいと思っています」
「パ・リーグ インサイト」駒田英