JR東海CM「クリスマス・エクスプレス」深津絵里編 ムーンウォークをあえて取り入れた狙いとは?
TOKYO FMの音声サービス「AuDee(オーディー)」で配信中の、放送作家兼ラジオパーソナリティの植竹公和が、彼のレーダーにかかった文化人を招いて送るスペシャルトーク番組「歌う放送作家 植竹公和のアカシック・ラジオ」。今回のお客様は、JR東海のCM「クリスマス・エクスプレス」シリーズなどで知られるCMディレクターの早川和良さん。伝説のCM制作の裏話について語ってくれました。 ▶▶【音声を聴く】「植竹公和のアカシック・ラジオ」
◆あえて若い人をキャスティング
植竹:1988年の深津絵里さん主演の「クリスマス・エクスプレス」のCM(ホームタウン・エクスプレス X’mas編)ですが、深津さんを選ばれました。 早川:当初キャスティングの年齢をどこにするかということで、けっこうエージェンシーの方と議論したんです。エージェンシーの方は学校を卒業した人と、まだ学生の女子大生がターゲットなので、その辺の登場人物を設定していました。 私は、「そこをターゲットにしたいんだったら、ターゲットにしたい人と同じ年代の人を登場させてはダメ、もっと若い人にしなければダメです」と反論しました。 植竹:それはどういうことですか? 早川:こんな素敵な話は(同世代の)みんなが持っているわけがないので「自分が若かったときに、ひょっとしたらこういうことがあったんじゃないか」と思えるような幻想を作らないと、これは(観る側に)入ってこないと言ったんです。 自分と同じターゲットの人たちが演じてしまうと、ある種の「俺とは違うよな」という話になっちゃうんですよ。だけど年下の人が主役になれば「俺もああいう青春時代があったんじゃないかな」という風に思えるんです。 植竹:なるほど。 早川:そこを狙って、若い深津さんを起用しました。 植竹:年齢設定は何歳ということで? 早川:私は16、7歳あたりを想定していました。 植竹:相手方の男子はいくつぐらいの設定なんですか? 早川:20歳ぐらいですかね。ちょっと上です。 植竹:ホームで待っていると、彼氏の姿がなくて新幹線もいなくなっちゃう。そこで(彼氏は)ムーンウォークで出てきます。ムーンウォークを使ったというのは? 早川:ちょっと前にマイケル・ジャクソンのムーンウォークがあって、それが世間的にも落ち着いたころでした。「いまさらムーンウォークかよ」とは言われたんですが「待っている女の子の気持ちも知らずに、男の子がおバカをやっている」というギャップを作りたかったんです。「私はこんなに心配して待っていたのに、なにバカやっているのよ」と。 植竹:女子の心も知らないでと。 早川:つまり女の子を喜ばせようとしているんだけど、滑っちゃっていると。そこで深津さんが「バカ」と言うわけです。 植竹:男性はもう1名用意していたんですって? 早川:はい、Wキャストです。メインで選んだ人がムーンウォークができればよかったんですが、そんなに簡単にできるものじゃありませんから。それでダンサーをもう1人起用しました。 植竹:プロのダンサーなんだ。 早川:顔がバレるんじゃないかということで、「ギフトで顔を隠せばいいじゃないか」と(笑)。 植竹:それでギフト! 顔にかぶせてリボンのついたボックスのやつね。