7年ぶりの挑戦 第3部 明豊/上 食事、悩みも 心身支え /大分
テーブルに並ぶ昼食のお弁当容器にどんぶり1杯くらいの白米が次々に載せられていく。この日のおかずは、たっぷりのチキン南蛮。盛りつけているのは、野球部員の大多数が暮らす「創心寮」の栄養士、高木友美さん(30)=大分市=だ。 高木さんは、寮の3食の献立や衛生管理を任されており、人手が足りないときには、盛りつけや調理も補助している。高校の頃からプロ野球の福岡ソフトバンクホークスのファンで、観戦やキャンプに通い詰めたという。「プロ野球の寮の栄養士になりたい」。いつしか、漠然とこう夢見るようになった。 しかし、調べてみると、プロの寮で働くには、自分が取得した栄養士の上位資格である「管理栄養士」でなければならないなど、厳しい条件が並んでいた。「プロの寮の就職は難しい」と考え、介護士として介護施設に勤めた。そして3年前。転機が訪れる。地元の高校野球の強豪・明豊が栄養士を募集していると聞いた。「(同校出身の)ホークスの今宮健太選手に会えるかも」。早速、応募し、採用された。 「まだ今宮選手には会えていない」と笑うが、寮生だった今年卒業の浜田太貴選手が東京ヤクルトスワローズに入団するなど、プロとの近さを実感。「センバツでは悔いのないように全力を出してほしい」。朝から時には深夜にも及ぶ献立作りや調理にも熱が入る。栄養バランスはもちろん、選手の好き嫌いを食べ残しや反応を見て考え、日々メニューを工夫する。 厨房(ちゅうぼう)で働く河野京子さん(61)=別府市=は務めて7年ほど。息子が別府の高校で野球をしていたといい、選手たちに親近感を持つ。「いつもおいしく食べてくれる。センバツでは過去の最高成績ベスト8を超えてほしい」。願いを込めて料理を作り続けている。 ◇ ◇ 高木さんらは2017年の夏の甲子園出場が決まった際、バーベキューを実施した。選手の「牛肉が食べたい」というリクエストに応えたものだ。選手たちに焼かせてけがをさせられないと考えた結果、監督にも手伝ってもらい、肉を焼いたという。「今回も選手たちを元気づけることを検討中です」 食事当番の1年生とは、食事のほかにも、練習の悩みの話などを聞くこともあるという高木さんと河野さん。選手たちの心身を支え、大舞台での勝利を願う。 × × 県勢7年ぶりのセンバツをつかんだのは、選手たちの努力だけによるものではない。周りのサポートがあったからこそ。10年ぶり出場の明豊と初出場の大分のナインを支える人たちに焦点を当てる。