いざデイトナ! IMSAテスト参加の太田格之進、アキュラLMDhのシート獲得に繋げられるか「レーサーとして生きるなら、世界を見たい」
先日、ホンダ・レーシング(HRC)からサプライズな発表があった。スーパーGT、スーパーフォーミュラといった国内トップカテゴリーで活躍する太田格之進が、11月にデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで行なわれるIMSAスポーツカー選手権の公式テストに参加することになったのだ。ドライブするのは、LMDhマシンのアキュラARX-06だ。 【太田は無念の接触リタイア】2024 スーパーGT第7戦オートポリス:決勝ハイライト(GT500) この動きは、アメリカのホンダ・パフォーマンス・デベロップメント(HPD)が組織編成により昨年から『HRC US』となり、日米HRCの協調路線が強まったことと無関係ではないと言える。 ホンダはアキュラブランドでIMSAに参戦しており、2025年はメイヤー・シャンク・レーシングが2台のアキュラARX-06を走らせる。そしてその内1台はHRC USのエンジニアらが参画し、実質的なセミワークスのような体制になるのだという。そんな流れの中で、日本のHRCに所属する太田がIMSAのテストに送り込まれることになったのだ。 テスト参加が決定してから、10月に2度渡米し、URC USのシミュレータを体験した太田。WEC(世界耐久選手権)、ル・マン24時間などの耐久レース最高峰の舞台で戦うLMDh車両、そしてデイトナの印象について彼は次のように語った。 「コースとしてはそんなに複雑ではなく、慣れるのにはそれほど時間はかかりませんでした。強いて言うならば少しパンピー。バンクも別に全開で走るだけなので大したことはないのですが……走ったことがないという意味で『こういう感じなんだ』と思いました」 「クルマに関しては、当然速いクルマですしダウンフォースもしっかりありますが、日本のGTほどグリップするタイヤではないので、速く走らせる事に対してはあまり難しくありませんでした。もちろん独特の動きもあるのですが、日本でやっている2カテゴリーと近いレベルのパフォーマンスを持っている車両に乗るという点では、そんなに問題ありませんでした」 非常に順調なシミュレータセッションであったことをうかがわせた太田だが、大量のスイッチ類には手を焼いたようだ。 「こんなにマルチタスクしたことないよ!ってくらいでした。本当に複雑でしたし、ドライビングに集中しつつ、その辺りもミスなくやらないといけません。速く走らせるためのモード変更だけではなく、何かが起きた時のための対処など多くの項目があり、耐久ならではだなと思いました」 SNSでのテスト参加発表でも、流暢な英語を披露した太田。インターナショナルスクール出身で、小学校に入学する頃には基本的な英会話は身についていたというものの、その後もブラッシュアップを重ね、スーパー耐久では外国籍チームに所属して英語での生きたコミュニケーションを経験するなど、海外挑戦に向けた準備を着々と進めた。 一方で、「海外でレースをしたいということについては、何か特別な理由があったかと言われるとそこまでではなくて……」と意外にも淡々と話す太田。しかしながら、世界の舞台で戦いたいという欲求はレーシングドライバーとしては当然のことだとも語った。 「色んなところでレースがしたいと思っていますが、特にアメリカはすごく盛り上がっていますよね。エンターテインメントと伝統の融合というか……スポーツとしての地盤がしっかりしている上に、ヨーロッパ以上にエンターテインメント性が強くて、ファンも熱いですし、そういうところに惹かれました」 「海外でレースをしたいということについては、何か特別な理由があったかと言われるとそこまでではなくて。やっぱりレーサーとして生きていくなら、世界、北米の舞台を見ておきたい……ある意味当たり前のことなのかなと思っています」 そしてやはり太田に期待がかかるのが、アキュラのドライバーとしての来季IMSA参戦だろう。現在メイヤー・シャンクは長時間レースで起用する3人目、4人目のドライバーを明らかにしていない。HRCの担当者はまだ決まっていることはないと話していたが、太田がテストで好印象を残せば、シート獲得に繋がる可能性もあるかもしれない。 実際、HRC USのデイビッド・ソルターズ社長もHRCの公式サイトのインタビューで、日本人ドライバーをアメリカのレースで起用する可能性について、「基準は非常に高く設定しているが、それらに見合う力を持ったドライバーが日本にいれば、アメリカのレースへ参戦してもらいたい」とコメントしている。 「今回のテストで僕がやらないといけないことは、自分の実力、速さや安定感をHRC USにアピールし、証明していくこと。これがまず一番大事だと思っています」と太田は言う。 「今回それをしっかりとやることによって、今後のIMSAのシートも近付いてくると思います。道は開けてくるかなと」
戎井健一郎
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