コロンビア墜落 「凱旋」の可能性もあった元Jリーグ組
「おとぎ話」の主人公が見せた快進撃
日本での知名度はそれほど高くないが、シャペコエンセはこの数年で3部リーグから1部に昇格し、今シーズンは南米ではコパ・リベルタドーレスに次ぐ大きな大会として知られるコパ・スダメリカーナに出場し、決勝まで進出していた。2014年シーズンから1部で戦うシャペコエンセの年間予算は4600万レアル(約14億円)。ヨーロッパのトップリーグはおろか、ブラジルの1部リーグでも下から数えた方が早い予算額だ。ブラジル南部のサンタカタリーナ州のシャペコを本拠地とするシャペコエンセは、人口20万の小さな町にあるサッカークラブだが、残り1試合となった今シーズンは20チーム中9位と奮闘を見せていた。 ブラジル代表でプレーするようなスター選手がいるわけでもなく、1970年代後半に作られたホームスタジアムの収容人数は2万2000人と、非常に限られた環境の中で躍進を続けてきたシャペコエンセを突然襲った悲劇に心を痛めるブラジルサッカーの関係者は少なくない。ロイター通信は29日、ブラジルの複数のトップクラブが同国のサッカー連盟に対し、シャペコエンセを今後3年間は降格の対象にしないことと、各クラブが一定のレベルの選手をシャペコエンセに無償で貸し出すことを容認してもらうために動き始めたと伝えている。 メデジン近郊で発生した事故を受けて、南米サッカー連盟はすでに来月1日に予定されていたコパ・スダメリカーナ決勝の開催中止を決定したが、シャペコエンセと対戦する予定であったアトレティコ・ナシオナルは、クラブの公式サイトで「コパ・スダメリカーナのタイトルをシャペコエンセに譲ることを南米サッカー連盟に提案したい。今年の大会の優勝チームはシャペコエンセとして永遠に記憶されるよう願っている」との声明を発表している。 多くのサッカーファンを興奮させたシャペコエンセの「おとぎ話」は道半ばにして悲劇的な結末を迎えたが、時間を要しても、クラブが再び物語の主役に舞い戻る日を切実に願う。
------------------------------ ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト