長野県松本市の「源智の井戸」 清掃活動が曲がり角に
長野県松本市中央3の市特別史跡「源智の井戸」の清掃活動が曲がり角を迎えている。30年以上にわたって活動を担ってきた地元・宮村町一丁目町会(伴吉宏町会長)の「源智の井戸を守る会」が、高齢化と後継者不足のため5月に解散。現在は有志が細々と続けているが「先が見通せない」と不安の声が上がる。地域のシンボルで観光名所でもある井戸を安定的に存続させるため、行政の関与を求める声もあり新たな対応が求められている。 会解散後は、「そうは言っても井戸を放っておけない」と60~80代の町会有志4人が「井戸と花の会」(荻村繁男代表)をつくり、月2回集まって井筒内の砂利に付いた藻を取り除いたり周囲の雑草を取ったりしている。会の中では若手の山本慎二さん(61)は「夏場は藻がすごいので月3回清掃しなければならないし、雑草取りや花の管理、しめ紙の張り替えなど作業は多い。地元だけで請け負うのはやっぱり難しいと思った」と実感を語る。 守る会は7月、井戸を管理する市文化財課に解散を報告し、今後の市の関与を求めた。同課は、地元主体の現在のやり方は難しくなっていることを認めつつ「井戸は地域のシンボルであり地元が関われる体制は必要。業務委託も含め、来年度に向けて持続可能な形を模索したい」とする。 中心市街地には、観光資源や災害時の生活用水として市が平成10年代から改修・整備を進めた井戸が21カ所ある。そのほとんどが町会などを通じて住民が日常の手入れを担っているが、少子高齢化や町会加入者の減少などで源智の井戸のケースと同じ問題を抱えるところは少なくない。 伴町会長は「井戸は地元の誇り。清掃できなくなったからといって任せっ放しにはしない。どんな関わり方がいいのか地元としても考えていきたい」と話している。
市民タイムス