ドラえもんにも登場した「超・巨大中国恐竜」驚愕の命名秘話 魅惑の『恐竜大陸 中国』を知る
博士の発音は訛っていた
マメンチサウルスの化石が見つかったのは、中華人民共和国の建国から3年後の1952年、四川省宜賓県(現、宜賓市)の馬鳴溪でのことだ。 長江の上流である金沙江沿いで、自動車道路を建設するために山を切り崩して工事がおこなわれた際、労働者が岩盤を爆破。そこで出てきた石のなかに恐竜の化石らしきものがあり、道路工事チームが地元当局に報告したことがきっかけになった。 結果、宜賓県当局は工事の一時中止を決定。爪先の化石がサンプルとして北京へ送られ、中国古生物学の泰斗・楊鍾健が発掘調査にやってくることとなる。やがて巨大な竜脚類の化石が掘り出され、1954年にマメンチサウルス・コンストルクトゥス(建設馬門溪龍)と命名された。 社会主義国家・中華人民共和国の建国からほどない時期に、国の主役である労働者によって工事現場で発見されたという経緯もあってか、ユニークな種小名(生物の学名で属名のあとに付ける名称)がつけられた形だ。 もっとも、ユニークなのは「マメンチサウルス」という属名も同様である。四川省の「馬鳴溪」(マアミンシー)で発見された恐竜の漢字名が、なぜ「馬門溪」(マアメンシー)になっているのか。 その理由はなんと、楊鍾健の言葉の訛りが強かったことで、彼本人も周囲のスタッフたちも、発掘された場所の地名を誤記してしまったからであった(楊の故郷の陝西方言では「鳴」と「門」は同音になるという)。本来、マメンチサウルスは「マミンチサウルス」だったかもしれないのである。 中華人民共和国の建国直後で、標準中国語の発音や漢字表記がまだ確定しきっていなかった時代らしいエピソードだと言えよう。 ※ この記事は『恐竜大陸 中国』からの抜粋を編集したものです。
Minetoshi Yasuda