マーケティング領域で着実に普及する生成AI、企業の70%以上がパーソナライゼーションなどで活用
マーケティングにおける生成AI利用が拡大
2023年の一大トレンドとなった「生成AI」。社会経済を大きく変革するといわれ、巨額の投資資金が生成AI市場に流れ込んだ。 ただし、ガートナーがハイプ・サイクル理論において生成AIを過剰期待のピークに位置付けるなど、期待が過度に膨れ上がった状態というのも事実といえるだろう。 より正確にいえば、生成AIに対する期待と実際のインパクトのギャップが産業やビジネス機能ごとに異なっており、まだ生成AIのユースケースを特定できず、フル活用に至っていないケースが大半であるということだ。 それでも、2023年中に生成AIのユースケースを特定し、大きな変化を起こしている領域はいくつか存在する。 その1つが「マーケティング」だ。コンテンツ生成や広告コピー生成に特化した生成AIプラットフォームへの関心が高まり、企業のマーケティング部門での導入が増え、実際に効果をあげているのだ。 生成AIは、画像、音楽、動画などさまざまなコンテンツを生成することができるが、最も得意とするのはテキスト生成。マーケティングとの相性が良く、生成AIを活用するマーケティング部門やマーケターが加速度的に増加している。 このことは、さまざまな調査で確認されており、今後さらに洗練されたユースケースが登場する公算が高まっている。
企業の最高マーケティング責任者、生成AI活用に積極的
たとえば、ボストン・コンサルティング・グループが2023年6月に発表した調査レポートよると、企業の最高マーケティング責任者(CMO)のうち、実際に生成AIをマーケティングオペレーションで利用していると回答した割合は、70%に上ったことが明らかになった。また、生成AIツールを試験的に利用しているとの回答は19%だった。 この調査は、2023年4月に、北米、欧州、アジアの8カ国における複数セクターのCMO200人を対象に実施されたもの。マーケティングオペレーションの中でも、特にどのような用途で生成AIが活用されているのか、その状況も明らかになった。 最も多い用途は、パーソナライゼーション(67%)だ。金融分野では、生成AIが顧客データを分析し、リスク選好度を割り出し、パーソナライズされた投資アドバイスを提供。またリテール分野では、ハイパーパーソナライゼーションにより、消費者の購買意欲を駆り立てる取り組みなどが実施されているという。 次いで多かったのは、コンテンツ生成(49%)。文章生成自体は、ChatGPTなど一般向け生成AIツールでも可能だが、マーケティング分野に特化した生成AIプラットフォームを活用するケースが増えている。その多くは、マーケティング用のテンプレートを備えており、担当者のリサーチやコンテンツ生成に要する時間を大きく削減することが可能だ。 このほかマーケティング分野では、市場セグメント化(41%)などで生成AIが利用されていることが浮き彫りとなった。 同様にセールスフォースが実施したマーケター1,000人を対象にした調査(2023年9月)でも、51%のマーケターが生成AIを利用していると回答。また、22%が今後すぐに利用する予定と答えており、3分の2のマーケターが何らかの形で生成AIを利用/利用予定であることが判明した。 現時点の生成AI用途としては、コンテンツ生成(76%)とコピーライティング(76%)が多かった。一方、多くのマーケターは、今後生成AIによる影響が、市場データ分析、パフォーマンス分析、マーケティングキャンペーン用のセグメント分析、配信用コンテンツのパーソナライズ、SEO戦略の構築・最適化などにも波及すると考えていることも明らかになった。