<一貫の春>センバツ・広島新庄 支える人たち/3 球児の食まかせて 栄養士・酒井千夏さん(29) /広島
寮生活を送る生徒たちに提供する、地元食材をふんだんに取り入れた夕食は、ご飯、汁物、おかず2品とあえ物が基本メニューだ。野球部員はほかより1品多く、カレーやイカの天ぷらが並ぶ日もある。「『お代わりありますか』。そんなちょっとした反応でもうれしいんです」。広島新庄の栄養士、酒井千夏さん(29)が言った。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 広島新庄で学ぶ生徒のうち、28日現在で野球部員を含む約130人が寮生活を送る。やはり寮生だった母校の栄養士に就いた原点は、中学で所属した陸上競技部にあった。食事の善しあしが、記録に影響するとはさほど考えられていなかったころだ。顧問の男性教諭から大会前の数日間で何を食べたのか書き出すよう指導され、食に強い関心を抱いた。 広島新庄に進み、敷地内にある食堂を利用した。「小学校のころから給食が好きで、同じテーブルで友人と囲む毎食が楽しみだった」。食への思いは強くなり、安田女子大(安佐南区)管理栄養学科に進学した。「これから大きくなっていく子どもたちが食べるものに関われたら」。管理栄養士の資格を取得し、22歳のとき母校に栄養士として戻った。 調理員が朝昼晩に提供する1週間分の献立を毎週木曜、食堂内に貼り出す。飽きさせないためのメニュー作りが腕の見せどころだ。同じ鶏肉の揚げ物でも空揚げ、チキン南蛮など工夫を凝らす。野球部員に人気なのはカレーやキムチスープ。納豆とキムチはよほど食が進むのだろう。部員らに「黄金コンビ」と言われたという。 「出場が決まるまではドキドキだった」と話すセンバツは開幕までひと月を切った。「しっかり食べて体調を整え、万全の調子で試合に臨んでほしい」と願う。【手呂内朱梨】