ラストシーンが泣ける…。映画『ロボット・ドリームズ』解説レビュー。名曲「セプテンバー」が彩る2人のダンスの意味とは?
ニューヨークの街の喧騒と名曲「セプテンバー」
また、台詞のない本作に色をつけているのが、豊富な音楽の数々だ…。ロック、ジャズ、ラテンなど、たくさんの音楽にあふれている。街の喧騒、公園の賑わい、地下鉄でタコが演奏するドラミングなど、ニューヨークの街中にあふれるリズムも心地よい。 特に、本作のテーマ曲として何度も流れる、アース・ウインド&ファイアーの「セプテンバー」は、シーンごとに異なる感情を呼び起こすから不思議だ。孤独だったドッグが、ロボットとかけがえのない日々を送る時に流れる「セプテンバー」は、一点の曇りもない晴れやかな感情に包まれる。 一方で、錆び付いて動けなくなったロボットが海岸で口ずさむ「セプテンバー」は、胸を締め付けられるような感情に包まれるのだ。 極め付きは、ロボットがドッグに自分の存在を知らせるために流す「セプテンバー」。喜び、切なさ、希望がごちゃ混ぜになり、泣きながら笑っているような複雑な感情がいっぺんに吹き出してくる。 それにあわせて、ドッグとロボットが出会った頃のように無邪気に踊る姿を見た瞬間、筆者の涙腺は崩壊してしまったのである…。 その踊りは、「もう元には戻らないけれど、決して色あせることのない素敵な思い出を胸に抱きつつ、生きていこう」というドッグとロボットの“新たなスタートの曲”のようにも聞こえてくるのだ。 このラストの「セプテンバー」を聞きながら、私は、思わず2人を抱きしめたくなった。ドッグとロボットの友情物語を中心に繰り広げられる深みのあるストーリーに、泣いたり、笑ったり。本作は、私たちの心にいつまでも残り続ける作品となるであろう。 【著者プロフィール:シモ(下嶋恵樹)】 東京都出身。横浜市在住。転職5回のサラリーマン生活を経て、フリーランスのライターに。地域情報サイトでの取材記事や映画サイトでの映画紹介記事、ビジネス系記事など、さまざまな執筆の経験あり。現在は、インタビュー記事などにも挑戦中。映画は幅広い国の映画を鑑賞。好きな映画は、『ニュー・シネマ・パラダイス』、『イル・ポスティーノ』、『パリ・テキサス』。
シモ