CarPlay登場で群雄割拠時代を迎える車載OS
自動車業界でシェア獲得を狙う「Tizen IVI」
情報系OSでは、Linux Foundationによるプロジェクトのひとつ、Tizen Associationが推進するLinuxベースのOSS(Open Source Software)「Tizen」も有力な候補に挙げられます。Tizenといえばモバイル向けOSの印象が強いかもしれませんが、「Tizen IVI」としてIVIシステム向けOSも開発が進行中。現在自動車業界で注目を集めている、HTML5との親和性が極めて高いことが特徴です。Tizen Associationには米Intelやサムスン電子を中心に、NTTドコモや富士通などが参加。2月13日には、ソフトバンクモバイルや米Sprintなど15社が新たなメンバーとして加わりました。 また、車載AV機器とモバイル端末の連携手法としては「MirrorLink」という通信規格もあります。こちらはCar Connectivity Consortium(CCC)が業界標準として推進しており、スマートフォンにインストールした専用アプリからカーオーディオやカーナビを操作したり、逆に車載機器でスマートフォンの機能を使えるようにするものです。SymbianやAndroidなどのOSに依存することなく、さまざまな端末と連携できるのが大きな特徴となっています。CCCのチャーターメンバーには、ダイムラー、GM、ホンダR&D、現代自動車、トヨタ、フォルクスワーゲンなど自動車関連企業、アルパイン、HTC、LG電子、ノキア、パナソニック、サムスン電子といったカーナビや携帯端末の関連企業が名を連ね、それ以外のコアメンバーや参加企業もかなりの数に上っています。
車載OSを巡ってはそれぞれの課題も
IVIと車載情報系OSを巡っては、これまでもいくつかの団体が規格を提唱してきましたが、いまだに業界全体を標準化するまでに至っていません。しかし、米AppleがCarPlayでの本格参入を発表したことが起爆剤となり、今後大きな動きを見せそうです。 最近はスマートフォンの地図やナビが一般化しているため、中には「iOSやAndroid搭載車両が登場すると、カーナビ業界がなくなるのでは」という声も聞かれます。確かに長期的に見るとそうした可能性もあり、業界としても何かしらの対策が必要となりそうですが、すぐにカーナビ全廃まで至ることはないでしょう。iOSとAndroidというスマートフォンOSの2強だけで見ると、iOSはiPhoneという単一シリーズ展開のため連携がとりやすい反面、iOS 6の発表時に地図関連で手痛いミスをした印象が強く、カーナビ機能に不安が残ります。一方のAndroidは、Googleマップという優秀なベースデータがあるためカーナビとしても優秀そうですが、スマートフォン連携となると機種数の多さがネックとなり、仕様の統合や開発に時間がかかると予想されます。 こうした動きを含め、IVIと車載情報系OSに関する今後の動向に注目したいところです。