アメリカ軍と親イラン勢力の「応酬」 その複雑な「背景」
「寸止め」状態の攻撃が続くイランとイスラエルの戦い
佐々木)レバノンのヒズボラはイスラエルと対峙し、イスラエルに向けて激しいミサイル攻撃なども行っているようです。今回のアメリカとイランの事件をきっかけに、イスラエルからヒズボラ、もしくはイランに対する攻撃がエスカレートする危険性はないのでしょうか? 黒井)もちろんヒズボラのバックにもイランがいるのですが、そういった勢力とイスラエルの対立はずっと続いています。イスラエル軍も直接イランまでは攻撃しませんが、シリアにいるイランの工作機関の拠点を攻撃し、イランの軍事顧問の高官が殺されるなど、お互いにやり合っています。ただ、やはり直接やり合うと戦争になるので、お互い控えている。ある種の「寸止め状態」での攻撃は同時並行で行われており、これからも続くと思います。
紅海でフーシ派が船舶2隻にミサイル発射したのは米英への報復
新行)イエメンの親イラン武装組織フーシ派が、紅海で2隻の船舶にミサイルを発射したという報道もありました。 黒井)フーシ派のバックにもイランがいます。イランの指示で、最初は対イスラエル関係の船舶を攻撃するため紅海に入ったのです。それに対して、米英を中心にフーシ派への攻撃があったので、その報復として今回、アメリカとイギリスの船を狙った。ただ、こちらも限定的です。バックにはイランがいるのですが、イランが出てくることはありません。 新行)今後も船舶に対する攻撃が続く可能性はありますか? 黒井)必ず続くと思います。フーシ派はまだ勢力を残しており、それに対する報復を宣言していますので、必ず行われると思います。
紅海を通れるようにするためにはどうすればいいのか
佐々木)紅海が通れなくなり、結果的にスエズ運河がストップしてしまった。最近、パナマ運河も通行を制限しているため、まるで19世紀のように喜望峰を回るパターンが増えているようで、グローバルサプライチェーンもかなり影響を受けています。今後、紅海を通行可能にするためにはどういう展開が必要でしょうか? フーシ派を壊滅させるしかないのですか? 黒井)いま米英中心に行っているものを強化するしか方法はありません。フーシ派を潰すのは難しいと思いますが、フーシ派がそういうことをすれば何倍も報告を受けるというように、フーシ派が攻撃を弱める方向へ持っていくしかない。 新行)日本にも影響が及びますよね? 黒井)紅海を通れなくても、アフリカ南部を通るルートがありますので、途絶するわけではありませんが、運航費が掛かれば値上げにもつながりかねないと思います。