小林麻美が語る松田優作、根津甚八、寺尾聰との知られざる思い出 “伝説のミューズ”が考えるジェントルな男性とは?
松田優作との思い出
ミステリアスな男性という意味では、松田優作さん。『野獣死すべし』で一度だけ共演しました。危ない感じがまた魅力です。優作さんをジェントルマンだと思うには私はまだ若かったですけど。とにかく寡黙でミステリアスな方でした。寡黙な男の人って、いいですよね。見えないところがあるというのが大事なのかな。優作さんもまた心遣いがある方で、撮影中、父が亡くなった時も親身にケアしてもらいました。私は優作さんに撃たれる役でしたが、その銃撃シーンがとても怖いだけでなく、血糊を仕掛けてあるからNGも出せない、いろいろな緊張を与えるシーンで焦っていた時、出番のない優作さんがわざわざいらして、勇気づけてくれました。優作さんがいなかったらびびってしまって、きっとあのシーンはうまくいかなかったでしょうね。 優作さんと映画のスチールを撮ることになったのですが、私は真っ赤なドレスにヒールというスタイルでした。ヒールを履くと身長が180cmくらいになってしまうので、私はなかなかヒールが履けなかったんです。でも優作さんは背も高かったから、隣に立っても大丈夫。気に入ったドレスを着ることができるというだけで、とても嬉しかったのを覚えています。そんな優作があんなに早く遠くに逝ってしまうとは。私にとっては永遠のカリスマです。 危ない感じの男性が好きなんでしょうね。この人と付き合ったら危ないなっていう人に惹かれますが、結果、付き合ったことはないです(笑)。根津甚八さんもそのひとりでした。『胸さわぐ苺たち』というドラマでご一緒しました。地方ロケも多くて、いつも一緒に飲んでました。所作や立ち振る舞いだけでなくて、とにかく危険なフェロモンを発していました。 いまだと誰ですかね? 実はいるのです。この人といま会ったら、全部捨ててついていっちゃうかもって人。韓国のチョ・インソンさん。ドラマ『その冬、風が吹く』を観て以来ハマっています。もしかしたら、何かを引きずっているのではないかと思うような影があって、危ない感じでかっこいいです。もうパーフェクト! いまの私にとってのジェントルマンがいるとしたらこの人かな。取材があったら教えてくださいね」
小林麻美(こばやしあさみ)
1953年生まれ、東京都出身。1972年『初恋のメロディー』で歌手デビュー後、資生堂、パルコなどのCMが話題に。1984年には松任谷由実がプロデュースした『雨音はショパンの調べ』が大ヒット。1991年、妊娠、結婚を機に引退。25年の時を経て、2016年ファッション誌『クウネル』(マガジンハウス)の表紙で復帰。 文・古谷昭弘 写真・藤田一浩 ヘア・松浦美穂(TWIGGY.) メイク・COCO 編集・稲垣邦康(GQ)