「失敗があるとエンジニアは強くなる」 H3ロケット打ち上げ成功までの2516日 挑戦を続けた技術者たちの記録
そして、2月17日 午前9時22分55秒。去年の失敗を希望に変えて、日本の未来を背負って、H3ロケットは飛び立った。 大気を切り裂き、機体は宇宙に向けてぐんぐん進んでいく。ここまでは順調だが、まだ気は抜けない。今回の大きな目的はふたつ。前回着火しなかった2段エンジンを計画通り着火・燃焼させること。そして、計画通り停止させることだ。管制棟の空気が張り詰める中、2段エンジンの着火を確認。それから約10分後、ついに…。 「第2段エンジン 第1回燃焼停止」
2段エンジンの停止を知らせるアナウンスが響き渡った。ついに打ち上げに成功したのだ。管制棟に割れんばかりの拍手と歓声が上がった。喜び抱き合う者、握手を交わす者、ガッツポーズをする者、誰もがみんな、涙と笑顔で顔をぐちゃぐちゃにしていた。もちろん、LE-9設計者の前田も例外ではない。 三菱重工 LE-9エンジン設計者 前田剛典: 「長かったという感じです。これを1年前にやりたくて頑張ってて、今日、みんなで喜べたのが何よりうれしいです」
プロジェクトマネージャの岡田は、仲間たちと喜びを分かち合った後、打ち上げ成功を報告する記者会見を開いていた。会見で終始笑顔だった岡田は、最後に力強くこう語った。 JAXA H3ロケットプロジェクトマネージャ 岡田匡史: 「ロケットの失敗はやっちゃいけないこと。ただ、失敗があるとものすごくエンジニアが強くなる。この1年で強くなったエンジニアに『後はよろしく頼むぞ』という思いでいる」 度重なる延期、そして失敗からの見事な復活劇。しかし、H3ロケットはスタートラインに立ったにすぎない。これからどんな活躍を見せてくれるのか。ここからが勝負だ。