白亜紀からのタイム・カプセル 琥珀の中に閉じこめられた恐竜の羽の発見
「琥珀の中に閉じ込められた恐竜(の体の一部)」と聞いて、すぐにサイエンス・ノベル「ジュラシック・パーク」(Michael Crichton著:1990年)や同名の映画(1993年)を思い出す方が大勢いることだろう。琥珀に閉じ込められた蚊の中に含まれていた「恐竜の血」をもとに、DNAの情報を復元し、現在に生きた恐竜を直接復活させるというアイデアは、当時のサイエンティストから見ても非常に斬新だった。今回の研究がメディアで大きく取り上げられた背景には、このような事実が見え隠れしていたのは間違いないだろう。 ノベルと映画が登場して20年以上たった今日。しかし私の知る限り恐竜の血を含んだ蚊の発見は、今のところ聞いたこともない。DNAの復元をもとにしたクローン恐竜を誕生も、いまだに映画の中だけの話にとどまるようだ。 先述のCNNなどのニュースによるとこの化石標本(=琥珀)はもともとミャンマー内で発見されたそうだ。琥珀を専門に取り扱う業者と化石研究者のやりとりや、この標本の再発見などのいきさつは興味深いとこだ。しかし諸々のニュース・ソースにおいてすでに紹介されているので、ここでは省かせていただく。
オリジナルの研究論文によると、この化石標本はミャンマーにある白亜紀中期(約9900万年前)の地層から発見された。化石標本は琥珀のかたまり一つだけが、その中にはいろいろ細かなものが混じっているようだ。一つ完璧に保存された蟻(アリ)の姿が見られる(この昆虫の化石も非常に興味深い)。そして4cm弱ほどの長さの羽も丸ごと琥珀の中に保存されている。羽の根元には筋肉と靭帯に一部も残っていた可能性があるそうだ。 今回の研究論文はオープンアクセスなので、以下のサイトで直接閲覧可能だ()31193-9.pdf)。琥珀の全体像や羽のきれいな写真も幾つか見ることができる。 特に中国の遼寧省等からこれまでに何百という羽毛の跡を残した(鳥類を含む)獣脚恐竜の骨格化石が知られている。こうした標本のものと比較した結果、この羽は小型獣脚類の一グループ―比較的初期のCoelurosauria(コエルロサウルス類)―に属すと考えて間違いないそうだ。大きさと形態から「幼体の尻尾」に生えていたという判定も下された。