中小企業が現代を生き抜く方法「大企業のマネをするな」
取り巻く時代環境
2008年からの過去5年間、企業倒産件数は減少傾向ではあるものの、昨年は1万2124件とけっして少ない数ではありません（東京商工リサーチまとめ）。アベノミクス効果で景気は上向いてきているとの見方もありますが、いまは中小企業にとって生きづらい時代なのか、生きやすい時代なのか。その問いに対し、柏原氏は「中小企業はどんな時代でも基本的に『弱者』といえる」と答えます。中小企業のオーナーの中には、先行きが不透明で自分の会社を売却する人もたくさんいるというのです。 ただ同時に「チャンス」でもあるといいます。つまり、これまでの時代と違い「アイデア一つでやっていける」時代だというのです。例えば小売業界をとってみても、アイデア次第で業績を伸ばせるといいます。その背景の一つとして、柏原氏は、東日本大震災の前と後では人々の価値観は変わったと見ています。震災前は「目に見えるもの 分かりやすいもの」に価値を見出してきたのに対し、震災後、特に若い層は「『つながり』などの目には見えないもの」にも価値を見出している、との分析です。
ネット時代はチャンスか
アイデア一つで「勝負」できる上、インターネット時代では、資金力のない中小企業でもネットを活用したプロモーションができるため、どうしても不特定多数の「マス」を狙いがちです。しかし、柏原氏はここでもやはり「フォーカス」が大事だといいます。「いきなりマスを狙っても結果的にはだれにも刺さらない」。柏原氏は「こういう人に買って欲しい」と対象を絞った方が、長い目で見れば商機は広がると説明します。 また、日本では「ニッチ」な分野だったとしても、海外を視野に入れたグローバルな展開も期待できるかもしれません。柏原氏は、例えば「コスプレ」のような分野のニーズは世界共通かもしれない、といいます。また、すぐにはニーズがなくても新興国でニーズが生まれる可能性があり、その際は競合他社がいないため、中小企業でも世界に打って出ることができる、という可能性もあるようです。 柏原 雄一郎（かしわら ゆういちろう） 三菱UFJリサーチ＆コンサルティング株式会社 コンサルティング・国際事業本部 シニアコンサルタント。関西学院大学社会学部卒、神戸大学大学院経営学研究科修了。信託銀行、監査法人勤務を経て、2008年MURC入社。数多くのM&A・グループ組織再編を手がけるとともに、中堅・中小企業に対する事業戦略立案・実行支援に関するコンサルティングも行っている。
