小泉今日子、振り切れた自虐的“おばさん”感がかわいい『監獄のお姫さま』
17日スタートした小泉今日子主演『監獄のお姫さま』(TBS系)は、小泉とは『あまちゃん』以来となる宮藤官九郎脚本、伊勢谷友介の民放ドラマ初出演、安室奈美恵の主題歌と話題性も盛りだくさん。アラサー以上のベテラン女優をメインに揃え、“おばさん犯罪エンターテインメント”を謳うが、おばさんという前に、出てくる女優が本当にステキな役者、ステキな女性ばかり。しかし、それは一手見誤ると痛くなりがちな“美魔女”と讃える類のものではない。 【連載】新番組レビュー
自虐的「おばさん」に共感、どこかかわいらしさも
ドラマは今年のクリスマス時期という近未来の日付から始まる。罪を犯した5人の女たち(小泉、菅野美穂、坂井真紀、森下愛子、夏帆)と、罪を憎む1人の女刑務官(満島ひかり)が、伊勢谷演じるイケメン社長への復讐計画を実行するがハプニング続き。リアルタイム視聴したのだが、冒頭からトリッキーかつテンポのいい展開と宮藤お得意の小ネタ満載で、もったいなくてチャンネルを変える気を起こさせない。 公式サイトや公式動画などでも「おばさん」という表現が前面に出てくるが、どこか自虐的で「痛い」と思われる前に自分で言ってしまえ的な潔さが漂う。まだまだおばさんとは言い難い小泉に「おばさん」全開の演技をさせ、息子役の神尾楓珠に「老けたね」と言われてしまうあたり、同世代としては共感をおぼえると同時にかわいらしさも感じた。 ちょうどこのドラマを見る1週間ほど前に、あるアーティストの取材でPR担当の関係者とゆっくり話をする機会があったのだが、とかく日本の芸能界ではアイドルにしろ女優にしろ若さゆえの初々しさ、みずみずしさといった面は称えられることが多いけれど、成熟することの良さも、もっと褒め称えられていいのでは……という話題で盛り上がったところでもあった。レザーのサイフだって、ピカピカの新品のときの香りや手触りもいいけれど、ある程度使ってにじみ出てくる味わい深さと愛着はさらに捨てがたい。それを劣化と呼ぶ人はまずいないだろう。 女優がステキなのと同時に伊勢谷や塚本高史らイケメンもばっちりキャスティングしているわけだが、それぞれに個性と演技力を兼ね備え、芝居のクォリティーという面では安心して見ていられる。実力派がズラリ揃うなかで、イケメン社長の、絵に描いたような一本抜けたセレブ妻役の乙葉もいい味を出している。 余談だが伊勢谷といえば、直近の出演ドラマは2015年のNHK大河「花燃ゆ」。同作で伊勢谷が演じた吉田松陰の妹役でヒロインの井上真央も、あれ以来の出演となる主演ドラマ「明日の約束」が、他局だがちょうど「監獄のお姫さま」の前の時間帯となる。「花燃ゆ」ファンにとっても嬉しい火曜夜になりそうだ。 2話以降は彼女たちが出会った6年前の”監獄”まで時間を巻き戻し、過去と現在が交差しながらダークなイケメン社長へのお仕置きが始まるというから、いよいよ本番という感じ。間違いなくまた観てしまうだろう。役者の魅力と実力にはまったく問題がない。宮藤官九郎の脚本を、どこまで演出が活かしきれるかがドラマの成否を分けるだろう。 次も観たい度 ★★★★☆ (文・志和浩司)