飼い主を悩ませるかかりつけ医と専門病院の連携の悪さ…転院するときは報告を【ワンニャンのSOS】
【ワンニャンのSOS】#84 ヒトも動物も年を取ると、病気やケガをしやすくなります。大病も珍しくなく、大がかりな手術となると、手術を行う総合病院とふだんの診療を担うクリニックとの綿密な連携が不可欠です。それはヒトも動物も変わりません。今回は、それに関連するお話を紹介します。 迷子の鳥探しに「無理じゃん!」愛犬家・眞鍋かをりの“うっかり発言”が攻撃された深層 あるシニアのワンちゃんは、加齢による心臓疾患で薬を処方していましたが、飼い主さんが引っ越すことに。同じ都内でも、とても当院に通院できる距離ではなく、これまでの病状や治療状況、服薬情報などを添えて引っ越し先の近くの動物病院に転院されました。その飼い主さんがずいぶん時間がたって3回、相談に来られたのです。 話を聞くと、転院先の勧めですぐに心臓疾患の専門病院を紹介されて手術を実施。その結果、心臓の状態が改善し、私が処方していた薬ではなく、術後のケアを目的とする処方に変わったそうです。最初の相談はその薬についてでした。 飼い主さんとしては、手術が成功すれば薬は不要になると思ったようですが、そんなことはありません。術後に薬の種類を変えて処方されることはよくあります。1回目の相談時は、その薬についての説明が不十分だったようで、そこを説明して終了しました。 問題は、その後です。2回目は咳が気になるというので聴診すると、肺に軽度の異常が認められました。そのことを転院先の動物病院と専門病院の先生にそれぞれ伝えるようアドバイスすると、動物病院の先生は血圧の薬を処方することになったものの、飲ませても飲ませなくてもいいというあいまいな評価で、専門病院の先生も同調したといいます。画像に異常がなかったことが、おかしな評価の根拠でした。 私の判断は「飲ませるべき」。飼い主さんも納得して服薬を続けたところ、症状は改善しています。 3度目の相談は、専門病院での診察後です。診察時は何ともなかったのに、しばらくして咳がひどく、呼吸が荒くなったそうです。それでも、転院先のかかりつけ医は「異常なし」とのことで、相談に来られました。 私の診察では、明らかに聴診の異常があり、薬が必要との判断。飼い主さんも、私の診断に納得され、その日の注射と翌日からの1週間分の薬を受け取り、その後は1カ月ごとに当院に通院されています。 ■専門病院に転院先を伝える 今回の問題点は、かかりつけ医と専門病院との連携の悪さです。かかりつけ医は専門病院に遠慮しているのか、病状の変化を客観的に判断しようとしていません。一方、診察時の担当が必ずしも手術者ではなく、大規模ゆえに担当医が変わるため病状の共有がなされておらず、受診間隔が2、3カ月と長いことも病状把握を遅らせる要因になっていました。 それで飼い主さんも不安になって、遠くから当院に来られたのですが、この場合、専門病院にかかりつけ医を変える、転院することを伝えないと、当院にも診療情報の伝達ができなくなります。病院のシステムで、専門病院を重視するためです。守秘義務もあります。クリニックと専門病院の連携の悪さを飼い主さんが改善するのは難しいですが、連携の悪さを嫌ってかかりつけを変えるときは飼い主さんが専門病院に転院先を伝えることが大切です。 (カーター動物病院・片岡重明院長)