天草の新ごみ処理施設「白紙」に 老朽化する現施設、更新・改修の負担重く【連載 灰の行方㊤】
天草広域連合(天草市、上天草市、苓北町)の新ごみ処理施設計画は、焼却灰の搬入先を巡って紛糾し、受注企業の「不適切な行為」(連合)を理由に契約解除の方針を決める極めて異例の事態となった。連合は再入札の手続きに入るが、新施設の稼働は当初の2027年度から3年ほどずれ込む見通し。現施設の老朽化も進む中、天草のごみ処理はどうなるのか。「灰の行方」を追った。 ピットのごみを撹拌[かくはん]するクレーンの音が響く天草市魚貫町の牛深クリーンセンター。1992年3月に運用が始まったセンターは、壁や床の一部が剝げるなど老朽化が目立つ。 本年度はごみ計量機の更新に約1200万円など、施設の整備工事費に計5775万円を見込む。更新や改修は、支出が一時期に集中しないよう平準化しているが、老朽化するほど負担は大きくなるという。 天草市市民環境課の横山吉徳審議員(同センター担当)は「新施設の2027年度稼働を見越して補修計画を立てていた。稼働がずれ込むことで、さらに設備の更新が必要になるだろう」と気をもむ。
天草2市1町のごみ処理施設は天草市営3カ所と、広域連合運営2カ所の計5カ所。最も新しい本渡地区清掃センターでも供用開始から24年がたち、各施設とも設備の部分的な更新や補修でしのいでいる状態だ。 5施設から排出される焼却灰は年間約4100トン。天草市営分の計約800トンは牛深最終処分場へ、広域連合分の計約3300トンは大分市の最終処分場に搬入している。5施設の機能を集約する新施設は、それを全て資源化する計画だ。 新施設を巡っては、受注した川崎技研(福岡市)を代表とする企業グループが当初示した広島県福山市での資源化が困難となり、埼玉県の施設に搬入する代替案を提示した。ところが、企業グループは未着工だった福山市の施設を「建設途中」と説明するなど、「不適切な行為」が次々と発覚。連合は「事業提案書に虚偽記載があり、入札そのものが無効」と、5月25日に契約解除の方針を決め、計画は「白紙」になった。