「私は生き方ではなく守り方を間違えた」携帯電話の充電コードで愛する9歳の息子の首を絞めた母親 裁判で浮かび上がる苦悩と葛藤
■毎日登校に付き添い、体調不良を押して一緒に花火大会にも…息子の思いに応える被告 親一人子一人での子育てを余儀なくされた被告は、息子にできる限りの愛情を注ぐ。登校時は毎日学校まで付き添っていた。1人で登校できないわけではなかったが、「事故に遭うんじゃないかと思ったり、一緒にいられる時間は一緒にいたいと思ったりしたので散歩がてら送っていた」という。 逮捕後の鑑定留置でパニック障害と診断された被告。法廷では人混みが苦手だが、去年の夏には、息子から「花火大会に行きたい」と請われ、一緒に出掛けたエピソードも明かした。 「(花火を会場近くの)駐車場で見ようと思ったんですけど、想定以上に人が集まってくると動悸や吐き気、苦しさを感じたので息子に『ママ、具合が悪いから離れて見てもいい?』と聞いたら、『もちろん大丈夫』と。結果的に別の場所で見たときに息子が感動して泣いてくれたり『ありがとう』と言ってくれたりしたこともあった。いい子すぎると思った」 ■追い込まれていった被告体重12キロ減で周りからは「病的に痩せている」 被告人質問では、被告が徐々に精神的、身体的に追い込まれていった状況も明らかとなった。 1年ほど前からはそれまでの2倍の睡眠薬を服用し、午後10時に就寝しても、午前0時から2時に目が覚めてしまう。1日2~4時間しか寝ることができない日々で、被告は「睡眠という形では捉えられなかった」と話した。重ねて食事ものどを通らなくなっていた。 事件前は「朝にカロリーメイトとか、息子と一緒に夕食を食べるときにお茶碗1杯のご飯を食べる程度」。約3か月で体重が12キロも減り、身長153センチの被告は事件当時、体重36キロまで痩せていたという。 ■周囲に発したSOS救いの手は差し伸べられず…「死んでしまいたい」 孤独と不安の中で子育てをしていた被告。体調の悪化に入院することも考えたが、すでに両親は施設に入所していたため、自分が入院すると息子が1人に。息子から「ママ入院しないで」と言われ、入院は断念せざるを得なかった。当然、周囲に助けを求めることもあった。 息子が通う放課後デイサービスの職員に相談すると「(あなたは)うつだから動かないで。無理なことは一切しないで」と言われた。 母親の姿を見て、うつ病については理解していたが、自身がうつ病であるとは思っていなかった被告は、「相談したのに全否定されたように感じて、そのときぷつんと切れた感じになって、今までしてきたことができなくなった」 精神科医に相談した時も「あなたはうつだよ」「あなたが受けられるカウンセリングはない」と突き放されたように感じ、追い込まれていったという。「死んでしまいたい」という気持ちが頭に浮かぶこともあった。