近隣「騒音トラブル」で転居を余儀なくされた… “引っ越し費用”騒音元の相手に請求はできる?【弁護士解説】
騒音を避けるための「引っ越し費用」は請求できるか?
―― どうにも折り合いがつかず、住居から出ていかざる得なくなった場合、相手に引っ越し費用等の諸費用を請求できるのでしょうか。 池辺弁護士:この点は、騒音トラブルを理由として損害賠償の請求ができるかという問題ですが、この点については、「受任限度論」という考え方があります。 受任限度論とは、一般的に人が社会生活をするうえで音を発することは避けられないことから、音を発することを一律に違法とは考えずに、社会生活上一般に受忍すべき範囲を超えて初めて違法となるという考えです。 法的に近隣の方の騒音を理由に損害賠償を請求するためには、この受任限度を超えた騒音であることを証明することが必要になります。受任限度を超える騒音が発生していたのか、どの程度の頻度で、どのような時間帯に騒音が発生していたのかを、騒音測定の専門業者に委託するなどにより証拠として残しておくことが重要になります。
背景に「ご近所」とのコミュニケーションの希薄化
冒頭のケースでは、警察通報にとどまっているが、近隣との騒音トラブルで殺人事件に発展するケースもあり、対処の仕方には十分な慎重さが求められる。 ―― そもそも騒音トラブルにならないためにどんな心がけが必要でしょうか。 池辺弁護士:騒音トラブルが発生する原因として、近隣同士のコミュニケーション不足があると考えられます。同じような騒音が生じたとしても、日ごろから近隣の方とコミュニケーションが取れていれば、日常会話の中で改善を促すことによって、自然と解消されることも期待できます。 逆に、コミュニケーションが取れていなければ、注意をする際も厳しい注意の仕方になってしまったり、注意を受けた側も素直に聞き入れようという気持ちにはならないものと思われます。 近隣トラブルの相手との関係については、近隣トラブルの解決支援サービスを展開するヴァンガードスミス(東京都港区)が調査している。それによると、67%が「顔見知り程度」にとどまっている。 地域でのコミュニケーション自体が希薄する中で、近隣で生活音等が気になれば、ストレスは蓄積される一方だ。2月に滋賀県で起こった近隣トラブルによる殺人事件では、ともに騒音について警察に苦情を伝えていた末の惨事だった。 池辺弁護士も指摘していたように、近隣トラブルのリスク回避のためには、引っ越してきた際の挨拶、顔を合わせればあいさつをして意識的に会話をする等、日常の近隣住民とのコミュニケーションが重要なのはいうまでもない。
弁護士JP編集部