『断らない救急』が裏目に?中核病院で15人の医師が「もうついていけない」などと退職表明…院長の“利益率アップ”で現場に歪みか
「断らない救急医療」で現場が過度に疲弊?
同病院は、「救急告示病院」として福岡市西南部を中心に救急医療を担っている。公式ホームページに掲載された院長の挨拶には、「軽症から超重症症例まで365日24時間体制で、質の高い救急医療を提供」と記されている。今年11月には前年同月比150台増、同病院として過去最高となる716台の救急車を受け入れ、「『断らない救急医療』を実践してまいります」と伝えている。医療機関に次々と受け入れを断られ、救急車が現場で“立ち往生”する事例が社会問題化している中、地域の住民にとっては頼もしい限りだ。一方で、先出の茂木医師によると、経営側の救急への注力が現場の医師との新たな“火種”にもなっているという。 茂木医師「救急の体制に関しても『もう断るな』と『取れ』と。みんな怯えてしまうんですよね。みんな疲れていて、もうこのままじゃ働けないということが起きていますね」 同病院の夜間の救急受け入れは、指導医と研修医とICU担当の3人の医師と4人の看護師で対応している。当直を担う医師は次のように証言する。 当直医師: 「深夜に3人の救急患者が搬送された日は、看護師がカルテを書く時間もなく治療を終えた別の3人が待機室に残されたままになりました。いつ急変してもおかしくない患者を診ながら、さらに救急要請があっても断ってはダメだという恐怖感がありました」 当の院長はクリスマスの25日朝、「小生の不手際、取り組みが急すぎたのは反省しております」とするメッセージを医師たちのレターボックスに入れた。そこには「病院長になり、病院の利益率がかなり低いことが判明しました」「福岡記念病院は、全職員600~700人も在籍している企業で、新病院建設という大きなプロジェクトを抱えております。しかし、昨今、大阪万博、天神ビッグバンでも皆様もご存知のごとく、建設費も急騰しておりますので、当院の売上げ、利益率では支払いには無理が生じ、病院としては少なからず負債を抱えることにもなるのではないかと不安感も覚えました」(中略)「HCU(=集団治療室)に(患者が)長期に在院し、ベッドが回転せず、その診療報酬が切られて赤字を出すという悪循環になっておりました。救急入院こそが当院の収益の生命線と考えておりました。そこから改善しないといけないと思いました」などと“経営方針”に理解を求めるメッセージが綴られていた。地域医療を担う中核病院で表面化した“集団退職”騒動。万野事務長は、あくまでも通常の人の入れ替わりの範疇で「診療に影響はない」と強調している。