『断らない救急』が裏目に?中核病院で15人の医師が「もうついていけない」などと退職表明…院長の“利益率アップ”で現場に歪みか
福岡市西部の中核病院として知られる福岡記念病院(福岡市早良区、病床239床)で、11人の医師が来年3月までに退職することがわかった。2か月前に就任したばかりの院長に対する不満や反発も原因だとみられている。さらに4人も退職の意思を示している。病院側は「診療に影響はない」と説明するものの、複数の病院関係者は、一部の診療科は常勤医師がいなくなるおそれもある、としている。背景には、数年後の病棟の建て替えを控え、“利益率の改善”に力を注ぐ理事長と院長ら経営側と一部の医師たちの軋轢が見え隠れする。 【写真で見る】中核病院で15人の医師が退職表明
15人の医師が集団退職へ なぜ?
同病院の万野貴司事務長(副院長)によると、来年3月末に退職する医師は9人。内情に詳しい病院関係者によると、この9人を含む15人が辞める意思を示している。これは常勤医師の約2割に相当する。最も多いのは救急・総合診療科の5人で、呼吸器内科2人、整形外科2人…と続く。補充の採用が順調にいかなければ、呼吸器内科は常勤医師がいなくなるおそれも出てきた。病院側は「例年より多いかなという数で、別に影響が出ることはない。採用に向け面接を行っている」と説明している。しかし、病院関係者は、「常勤医師の退職者は2021年が5人、2022年が7人、そして今年は5人となっていて、来年の15人がいかに多い数かが分かる」と主張している。 万野事務長は「院長への不満を理由に辞める医師はいない」と話す。それではなぜ、例年の約2倍の医師が退職しようとしているのだろうか。総合診療科の部長で新型コロナ対策室の室長を務めていた医師が語った。
「個室料を払えない患者は取らなくていい」
茂木恒俊医師: 「簡単に言うと“院長の発言”ですね。これで多くの医師が傷ついて、辞めたいと。かなり働きにくくなってしまっている。新型コロナは、軽症でも実は酸素を投与されている患者さんもいるんです。そういった患者さんは『もう入院させるな』と。新型コロナの感染対策だから個室料金は取ってはいけない。ただ、院長から言われたのが『個室料を払えない患者は取らなくていい』と。『他の病院に行って下さい』という形で、翌日に転院した患者さんがいるんです。もう唖然というか、僕はもうついて行けない」 JNNは辞意を固めた4人から直接、その理由を聞くことができた。全員が直接的、間接的に院長のマネージメント方針への反発を掲げた。中には「人事を私物化」「売り上げ至上主義」と院長を厳しく糾弾する医師もいた。