「ドイツモーターズ株価操作無罪」論理も無効に…韓国検察は大統領夫人を起訴できるか
裁判所がドイツモーターズ株価操作事件の控訴審で「資金提供者」役を果たしたS氏の株価操作ほう助を有罪と判断したことで、「共犯者ではない。公訴時効が過ぎている」とする尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫人のキム・ゴンヒ女史側の防衛論理も力を失った。キム女史の処分を先送りしていた検察が最終的にキム女史を起訴できるかに関心が集まっている。 大統領室は昨年2月に一審でS氏が無罪を言い渡された際、「大規模に取引したS氏に対しても、株価操作を知っていたかどうかは別として、大口投資家に過ぎず共犯ではないとして、無罪が宣告された」として、キム女史も疑惑はないと主張している。また「大統領の配偶者が預けた口座で一任売買をおこなった(2010年10月20日以前の第1次株価操作の『名人』)L氏に対して『公訴時効がすでに過ぎている』として免訴判決」が下されたことも指摘している。だが、起訴状変更を経てS氏に新たに追加されたほう助容疑を裁判所が認めたことで、大統領室の「キム女史潔白」の主張は立場を失った。 ソウル高裁刑事5部(クォン・スンヒョン裁判長)は今月13日、S氏が第2次株価操作の時期(2次期)に「名人」K氏に自ら連絡を取った内容などを有罪の主な根拠と判断した。判決によると、S氏は2012年3月から4月にかけてK氏に連絡し、「今日また詐欺をしたら許さない」、「私が自殺を考えるほど最悪」だと言って圧力をかけた。検察が確保したK氏の携帯電話から、S氏が株価操作を認知していたことを示す内容が出てきたのだ。裁判所は「(S氏の行動は)単に銘柄を推薦されて自分の責任で投資した者の態度とは考えられない」と判断している。 キム女史はS氏とは異なり、K氏ではなくドイツモーターズのクォン・オス元会長などを通じて、ドイツモーターズ株価操作の資金提供者役を果たした。株価操作の「名人」よりも「上の者」と直接のつながりがあったのだ。検察は、クォン元会長の2次期の携帯電話を確保できなかったため、キム女史と株価操作に関する会話を交わしたかどうかが確認できなかったという。 しかし、キム女史が株価操作について知っていたことをうかがわせる状況は、複数確認できる。控訴審は、株価操作勢力が2次期にあたる2010年11月1日に「12時に3300で8万個(株)売ってくれと伝えてくれ」などの会話を交わした直後、キム女史の大信証券の口座から同じ金額、同じ数量の株が売られたことなどをあげ、この取引は「なれ合い売買と認め」られると判決で述べている。当時、キム女史は証券会社の社員から電話で、株の売買が完了したことを伝えられている。これより数日前の2010年10月28日には、キム女史は証券会社の社員から「10万株(注文)した」と伝えられたことを受け、「締結されましたよね?」、「では、いくら残ったんですか?」と尋ねてもいる。 これまで「1次期の公訴時効満了」は「共謀容疑はこれ以上問う必要もない」というキム女史側の主張の大義名分となっていたが、ほう助容疑が追加されたことで、すでに公開されている事実関係はキム女史が1次期から株価操作を認知していたことを示すものになりうる。第1次株価操作の時期にキム女史は、名人として活動していたL氏をクォン元会長から紹介され、その後、証券会社にL氏の電話番号を伝えたうえ、自分の口座を通じたL氏の取引を許可している。キム女史は2010年1月25日、証券会社の社員に「今4万株を買った。2439ウォンだ。できれば終値にまた買うようにする」と言われた際に、「あの方から電話来ましたよね?」と問うている。この通話に登場する「あの方」こそまさにL氏だ。 そのため検察の内外では、捜査チームがキム女史を不起訴とするのは容易ではないとささやかれている。ソウル中央地検反腐敗捜査2部(チェ・ジェフン部長)は、キム女史の母親のチェ・ウンスン氏らを含む株価操作の資金提供者役を果たした91人に対して調査を進めつつ、最終的に起訴するかどうかを検討している。 キム・ジウン、チョン・ヘミン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )