新千歳の「JAL機緊急脱出」に潜むさまざまな危険 重要なCAの役回り
成功するかしないかは訓練次第
マクドネルダグラス社のデータを見ると、航空機事故の90%は、生存者のいる生存可能事故で、航空事故に遭遇したすべての乗客のうち69%は生還している。しかし、かなりの割合で事故と同時に火災が発生し、乗客は火炎に追われての脱出を余儀なくされている。 航空事故というと、どうしても死に直結したイメージがあるが、全体では7割弱が生きて帰っており、生還する可能性は具体的にあるといえる。ただ、事故の物理的ダメージと火炎の恐怖から逃れて生還するには、かなりの覚悟と事前の対策がいる。 脱出訓練がさらにレベルを上げて行われなければならないし、空港、航空機不時着時の対応、救急対応をシミュレーションする必要がある。 最近の旅客機には、さまざまな訓練度のCAが乗務している。実態は経営的な人件費の合理化の結果であるとしても、安全・セキュリティ面では完璧・正確な対応が要求されている。 例えば、航空火災発生時に脱出用のドアを開けるべきか、開けざるべきかは、瞬時の判断がいる。もし、エンジン火災時にエンジンに近いドアを開けてしまったら、瞬間的に火が客室に入りダメージが大きくなってしまうからだ。 航空関係者は、コストを超えて安全を講じることが最優先の仕事であること、乗客は問題行動が安全を損なうことを肝に銘じるべきであろう。
---------------------------------- (※1)…航空事故=航空機の墜落、衝突または火災、航空機による人の死傷または物件の損壊、航空機内にある者の死亡または行方不明、他の航空機との接触など (※2)…DC10全446機中、「完全機体損傷」事故を起こした27機で乗員乗客の69%が生還。最悪の事故3件を除けば90%が生存している
■藤石金彌(ふじいし・きんや) 航空ジャーナリスト。音の出る雑誌『月刊朝日ソノラマ』、月刊『安全』『労働衛生』。編集総括:『航空実用事典』(朝日新聞社)、著書『コクピットクライシス』『スカイクライシス』(主婦の友社)、『安全・快適エアラインはこれだ』(朝日新聞出版)、『航空管制「超」入門』(SBクリエイティブ)。元交通政策審議会航空分科会委員