ご飯の量を減らす日々なのに…「自民非公認2000万円問題」は有権者の怒りに油を注いだ 逆風は一気に暴風へ…最終盤、票は立民へ雪崩を打った〈鹿児島1区〉
衆院選は鹿児島県内4選挙区のうち3選挙区で自民公認候補が敗れた。自民の選挙区議席が半数を割ったのは結党以来初めて。選挙戦を振り返り、今後の展開を占う。(2024衆院選かごしま連載「自民3敗」①より) 【写真】〈関連〉立憲民主党の野田佳彦代表に握手を求める人々=23日、鹿児島市中央町
立憲民主の川内博史氏(62)が自民の宮路拓馬氏(44)との事実上の一騎打ちを2697票差で制した鹿児島1区。風が吹いたのは選挙戦終盤だった。 「自民党にペナルティーを与えなければいけない」。23日、鹿児島市であった立民の野田佳彦代表と川内氏の街頭演説は拍手や歓声が何度も湧いた。次の会場へ移動する野田代表を群衆が追い、握手を求める人が列を作った。同じ場所で4日前にあった石破茂首相の演説を上回る熱気だった。 野田氏がマイクを握ったのは自民非公認候補が代表を務める政党支部へ自民党本部が活動費2000万円を支給したことが報じられた日。川内陣営の幹部は「この日から街頭の空気ががらっと変わった」と振り返る。 裏金事件に関わった自民議員の公認問題が急浮上したのは10月上旬。それでも宮路氏の陣営幹部は自信を示していた。「3年間の実績がある。影響は最小限に抑えられるはず」 宮路氏は演説で「(裏金事件に)私は関わっていない。とはいえ党に10年いる責任はある」と釈明した上で「自民らしくない政策に取り組んできた」と逆風をしのぐ戦略。友好団体や地元議員を動員する組織戦を展開し、毎日開く個人演説会の席も埋まっていた。
一方、川内氏は「自民党と闘っている」と政党対決を前面に出した。序盤から街頭演説で裏金事件を厳しく追及したものの、「反応が薄い」(陣営幹部)と焦りも見せていた。 逆風が暴風に変わったのが2000万円問題だった。宮路陣営の幹部は「支援者からも『いい加減にしろ』と電話が来た」と嘆く。 共同通信などが実施した期日前投票の出口調査によると、19、20日は宮路氏が13ポイントリード。問題発覚後の24、25日は川内氏が9ポイント差で逆転した。無党派層に絞ると、前半は宮路氏が4ポイント上回っていたが、後半は川内氏が33ポイント差を付けた。 宮路氏は前回から約2万3000票減らした。複数の自民県議は投票率が約3ポイント下がった点を要因に挙げる。「政治とカネ問題への一連の対応に怒りを覚え、投票を見送った支持者も多かったのではないか」 長年自民を応援してきた自営業の60代男性も投票に行かなかった。物価高が続く中、茶わんに入れるご飯の量を減らす毎日。「政治とカネへの対応を見るたびに市民との格差を感じ、むなしくなる」とこぼす。
川内陣営にも課題が残る。追い風が吹いたにもかかわらず、前回得票に約8000票届かなかった。自民も立民も敬遠する既存政治への不信感が垣間見えた。陣営関係者は投票率が上がらなかった点に触れ、「自民の自滅が勝因の一つで、立民が全面的に支持されたわけではない。批判票の十分な受け皿にはなれなかった」と振り返った。
南日本新聞 | 鹿児島